ジャパンハート・佐藤様にインタビュー(後編)

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みなさん、こんにちは!広報の今泉です。本日は前回に引き続き、SHIFTナビということで、特定非営利活動法人ジャパンハートの事務局長・佐藤様と丹下さんの対談をお届けします。ジャパンハートは丹下さんが支援し、SHIFTとしても活動を応援している非営利団体であり、最高顧問である吉岡秀人先生(小児外科医)が自身の海外医療の経験をもとに、医療支援活動のさらなる質の向上を目指して設立した「日本発祥の国際医療NGO」です。後編は、丹下さんの熱い思いがますますヒートアップ! 佐藤様からも SHIFT メンバーへのメッセージもいただくなど、盛りだくさんです!ぜひ、ご覧ください。


丹下 大

聞く人/ 丹下 大(たんげ まさる)
2005年株式会社 SHIFT を設立。2010年からソフトウェアテスト事業に舵を切った後は、今日まで爆走。2014年には東証マザーズへの上場を果たすが、その夢は終わらない。

佐藤 抄

佐藤 抄(さとう しょう)
2011年の8月にジャパンハート入職。総務・広報として東京事務局の体制を整え、支援事業の拡大を支える海外事業部長代理、ファンディングと新規事業の立ち上げを行う事業推進部を歴任後、2017年3月、事務局長に就任。

コスト面も含めた持続性も考える

丹下 大

なるほど。では、次の国、カンボジアについてのお話を聞かせてください。

佐藤 抄

カンボジアでは、2016年の5月にジャパンハートの病院を建てました。丹下さんにもファウンダーとしてご支援いただきまして、病院にはお名前のプレートも置かせていただいています。それまでは政府の病院を間借りする形で医療活動を行っていたのですが、1~2週間で病院を転々としていたり、なかなか現地の医療従事者の人材育成を効果的に実施することが難しかったですし、継続性がないので患者さんも限定された条件の方しか来れなくなってしまうので、以前から病院を建てようという構想はあったんです。そんなところにカンボジアの保健省からほぼ無料で土地を貸していただけるというお話をいただいて、皆様のご支援を得て、無事立ち上げることができました。今では年間8,000名ほどの患者さんにお越しいただいています。現在、患者さんの8割弱は大人の方なのですが、そこに現在小児医療センターを併設しようとしていて、小児がんも含めた子どもに対する治療を集中的にやっていこうと思っています。越えなくてはいけないハードルはたくさんありますが、大人も子どもも含めて年間2万人くらいは診れる病院にしたいと思っています。


丹下 大

基本的にはカンボジアでの支出はそういう医療活動に使用していると。ラオスはどうですか?

佐藤 抄

ラオスはまだ医療活動拠点がないので、基本的には巡回診療としてこちらから山間部に出向いて、医師も見たこともないような山岳民族の方を対象とした診療活動などを行っています。ラオスは甲状腺腫瘍の患者さんが多く(※)、こうした方々を対象とした手術活動も同時に行なっています。

(※甲状腺腫瘍は、海に囲まれない土地にあったり魚を食べることができなかったりなどの理由でヨードが不足していると、罹患者が多いと言われています)


丹下 大

グラフからすると、支出としては2,600万円ほどをその活動にあてているわけですよね。結構かかりますね。

佐藤 抄

遠隔地となるとどうしてもアクセスが悪く、交通費だけでも結構かかってしまうんです。医療のスキルもまだまだ不足していますし、国民の8割が山間部に住んでいるのもありますし、舗装されている道路が3割程度しかないというような環境なのです。ただ、コスト面も含めた持続性も考えるとやはりどこかのタイミングで拠点は設けなければならないと思っています。


丹下 大

この、4.2%の「国際緊急救援事業」というのは?

佐藤 抄

日本やASEAN圏内で突発的に災害などが起こったときに、ジャパンハートに登録のあるボランティア登録メンバーが緊急医療支援活動を行う仕組みをつくるという趣旨の支援活動ですね。ちなみにジャパンハートでは緊急医療支援活動だけではなく、平時のミャンマー、カンボジア、ラオスでの医療活動においても、およそ年間で700名のボランティアを受け入れており、医師や看護師などの医療従事者も多いのが特徴です。とは言え一般の方や学生さんも多く参加してくださっているので、1週間ほどのボランティアメインのツアーも提供したりしています。医師だと参加費7万円のほか航空費など、もろもろ費用が掛かるので支援者の個人負担額でいうと実費で20万円弱は必要になるのですが、こうした方々の支えがあってこそより良い価値を提供できていると思うので、本当にありがたい限りです。


丹下 大

常勤のスタッフは何人いるんですか?

佐藤 抄

国内外で90名くらいですね。


丹下 大

なるほど。最近の国際緊急救援事業というと何がありましたか?

佐藤 抄

最近だと、実働は2016年4月の熊本の震災ですね。それ以降の実働はないのですが、災害支援というのは災害が起きてすぐ支援に行けるための準備や訓練が非常に大切なので、今はその体制の準備にあたっています。海外で支援活動を行おうとすると、支援チームが国内外からさまざま集まってしまい、それだけで混乱を招きますし、医療の安全性も担保できません。そこで、WHOが海外からの支援チームの「EMT認証」という、支援団体のレベルを測るための基準を設けたんです。


丹下 大

それってどんな基準なんですか?

佐藤 抄

例えば、所持している機材や設備は何なのか、どういった医療の専門家で構成されているチームなのかというのが基準です。そうした準備を、この先3年で取り組んでいこうという話をしています。今まさに設備投資などのコストをできるだけ抑えるために、現物で寄付していただけるような法人様に話をしたりしています。国際緊急救援事業で言うと、現在は実働よりも準備にかかっているところが大きいですね。


丹下 大

すごい!では、グローバル人材育成事業というのは?

佐藤 抄

学生さん向けのインターンなどもあるのですが、主な事業内容としては、看護師さんの1年間の研修制度の実施・運営を行っています。看護師さん1人の受け入れには、実費とは別に100万円を研修費としていただいています。1年間の研修のうちの半年間を日本の僻地・離島で地域医療などの研修にあたっていただいた後、後半の半年間でミャンマーやカンボジアなどの発展途上国で研修を受けていただくという形をとっています。年間でいうと約40名もの方が参加をしてくださっていて、看護師さんは自分のスキルアップだったり人間力強化だったり、患者さんに近いところでそれらを磨きたいという意識の高い方が多いので、貢献しながら学んでいただける事業としてご活用いただいています。また、短期なら参加できるという方向けの短期ボランティアも、この事業の傘下で行なっています。


丹下 大

事業収益のメインとなるのはココですか?

佐藤 抄

そうですね、短期ボランティアにご参加いただく方々の参加費と、看護師さんのこの研修費がメインの事業収益になっています。


医療の在り方を再定義したい

丹下 大

なるほど。活動内容についてはとてもよくわかりました。ありがとうございます!これ、聞いていいのかわからないのですが、僕は非営利団体に勤める人の給与水準は低いと思ってるんですね、勝手に。で、やっぱりみなさん的には働く理由としては、お金じゃないなって感じなんでしょうか?

佐藤 抄

そうですね、やっぱり事業自体が寄付金をいただいて運営している立場なので、スタッフの給与は少しずつ考慮してはいるものの、待遇面ではまだまだ……というのが本音です。しかし、やりがいだけではなく、継続して働いていけるように努力しなければならない部分でもあると思っています。だからこそ寄付金だけを収入源とするのではなく、自分たちの収益事業などで資金を集めるという仕組みを作って、スタッフにも還元していきたいと思っています。


丹下 大

そうですよね。アメリカではベンチャーより非営利団体の方が人気だったりしますけど、やっぱりそれは給料が高いからだと思いますし。そうして給料の高い人がちゃんとマーケティングを考えて寄付を払っている人たちに「ありがとう」を滞りなく届けられれば、もっと寄付金も集まるはずですからね。やれること、まだいっぱいありますよね。

佐藤 抄

そうだと思います。


丹下 大

佐藤さんが今後取り組みたいこと、実現したいことって何ですか?

佐藤 抄

たくさんありますが、一つとして、医療の在り方を再定義したいと思っています。おこがましい話かもしれませんが。現在、日本において社会保障における医療費が高額になり、このままの仕組みでは継続が難しいということは誰もが思っていることだと思うんです。そして私たちが発展途上国で挑戦しているのは「費用をかけずに、いかに患者さんに対して心の豊かさも含めた最善の医療を実施していけるか」ということです。患者(=お客様)から支持される医療の形が一つのモデルとして実現できれば、スペックダウンされた社会保障の枠組みの中で、逆にそれを先進国に提示するということもできるんじゃないかと思っています。なので、ジャパンハートは、医療というものが患者の人生の質の向上のためにどう関わるかという価値を再定義して、発信・体現する組織になりたいなと思っています。


丹下 大

そういう意味で言うと、何が日本の医療現場に必要だと感じますか?

佐藤 抄

おそらく今、大事なのは、医療従事者の非効率なものや効率化できない部分に割ける時間をいかにつくり出すことなんじゃないかなと思っていて、例えば医療従事者の1日8時間という勤務時間の中で、できるだけ業務を効率化すれば、非効率かもしれないけれど大切な「患者のケアの方針を考える」だとか「患者の傍にいる」だとか、そういった時間を生み出せますよね。なので、時間を作るということが大事かなと思っています。だからこそ私たちのようなバックオフィスが効率化できる仕組みを作って、いかに医療従事者に時間を持ってもらえるかというのを考えるべきかなと。


無理なく気軽にできるところから、つながりを持ってほしい

丹下 大

難しい質問かもしれないんですけれど、僕が吉岡先生の話を聞いていて根本的に僕と違うなと思いながらリスペクトしている部分があるんです。よく社内でも例に出すんですけれど、小学校のときに決めたことなんですが、例えば、人口が1億2,000万人だったとして、100人がペストにかかりましたと。100人を犠牲にして1億1,900万人を救うのか、100人を救うのか?という問題があったときに、僕は申し訳ないけれど100人を隔離して、この100人には犠牲になってもらおう、と決めたんですね。僕は資本主義で生きているので、全員を救う気はないんです。でも吉岡先生の話を聞いていると、100人を救おうとしているんですよ。どっちが良いってわけじゃないんですけど、佐藤さんはこれ、どう思いますか?

佐藤 抄

難しい問題ですね。でも、吉岡の動機としては、結局自分の目の前にその人がいる以上は見過ごせない、この人を助けたいという気持ちが大きいのだと思います。今の吉岡の活動も、その積み重ねなので。でも、むやみやたらに誰かを救おうというわけではなく、責任が持てる範囲で100人を救おうという考え方はあると思います。


丹下 大

そうですよね。ほら、究極の選択ってあるじゃないですか。もう乳すら飲めない赤ちゃんをそれでも手術をして助けるのかどうか?手術をしたとしても乳すら飲めないので生きてはいけない、でもお母さんの中に良い記憶で残してあげたいから1回手術をして治して、乳を飲んでもらった方がいいよねという、あの話に近いかなと思って。自分のできる範囲で最大限のことをしようというのは、すごく重要な考え方だなと思います。これは、僕が先生から学んだことです。あと、もう一つ。先ほど佐藤さんがジャパンハートに出会って感動したという話をされていたと思うんですが、このジャパンハートが、寄付をしている人たちにすべからく「ありがとう」を届けられるような、そんな何かしらの良い仕組みを作ったら、他の非営利団体にも提案できるんじゃないですかね?モデルを作るというか。逆に、近年伸びているジャパンハートと他の非営利団体との差異って何なのでしょう?

佐藤 抄

そうですね。日本ファンドレイジング協会という協会がまさにそういうことをやろうとしていて。仕組みもそうですし、テクニカルな部分もそうですし、広報的な部分も含めて多くのNGO・NPO団体が寄付を集められる団体にしようという動きはありますね。後半のご質問にお答えするなら、ジャパンハートがこの数年で急速な伸びを見せたのは、やはりメディアへの露出、外部での講演というのはあると思います。もちろんその裏には 「吉岡秀人」という人間の共感できる部分・魅力は少なからずあるとは思うのですが。


丹下 大

僕は、吉岡先生はアントレプレナーだなって思うんです。誰も行かなかったミャンマーへ行って、目の前の問題に対して自分ができること・やっていることが良いことだと信じて必死になってやって、それを周りがフォローしてくれて、リーダーシップがあって。何百人もマネジメントするということをよく意識されているなという印象があったんです。それから、僕の中で先生はブッダなんですよね。お話を聞いているだけで、とてもありがたいし幸せになれるんです。僕は先生の講演だったりメディアへの露出だったり、そういうところから寄付者は「ありがとう」を受け取っていると思うんですよ。だからこそジャパンハートは続いているし、伸びているんだと思っています。でも、それが本当は組織的にできるといいな、とも思うんですよね。いち経営者として。

佐藤 抄

吉岡の発案で、ジャパンハートはかなり敷居を下げてボランティアを受け入れる仕組みを作りましたが、発案当時は「自分がボランティアとして行くのにお金を払う」というのは、非常識なアイデアだったと思います。しかし、今はお金だけが価値ではなくて、価値観そのものが変化する中で、自分の体験にお金を投資することや、人の役に立つことで自分の心を豊かにするという考え方も少しずつ根付き始めたのかなと思います。こういう導入を先駆けてやっていたので、そういったところもジャパンハートの特異なところかなと思います。


丹下 大

他の団体もそういう風に考えればいいんですよね。勉強になるなあ。では、最後になってしまうのですが、SHIFTメンバーに向けて何かメッセージをいただけますか?

佐藤 抄

はい!私たちはお金だったりスキルだったり時間だったりと、それぞれの方が持っている価値を私たちに投資していただいているので、それをいかに最大化して現地の方々に価値として提供できるか、成果をお見せできるかということに対して真摯に、プロフェッショナルとして取り組んでいきたいと思っています。お金だけではなく、ご自身が持っているスキル、SHIFTの方であればITスキルですとか、特殊なスキルで貢献できますとか、お金の寄付という形ではなくてもいいので、まずは無理なく気軽にできるところから関わっていただく、つながりを持っていただくというところから始めていただけると非常にありがたいなと思います。


丹下 大

最高の締めくくり、ありがとうございます。やっぱり今日、僕はインタビューをする側ではあるんだけど、吉岡先生のお話と同じく、ブッダの話を聞いているような気分だったなあ。佐藤さん、今日は本当にありがとうございました。素晴らしかったです!

※取材内容はインタビュー当時のものです

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