SHIFTのみなさん
おはようございます。
飛行機の中で10時間も時間があったので、ブログを更新します。
アメリカに来ると、いつも多くの日本人を見かけます。
日本の多くの若者が、スタートアップという言葉に憧れてどんどん起業していて、
それはそれでいいことだと思うし、起業自体は簡単だけど、
1人から仲間を集めて、生涯をかけても良いと思えるビジネスモデルに出会って、
お客様のニーズに応えて企業として体裁を成していく様は、
得も言われぬ特別な思いがあります。
人類の発展は、人間の欲望をどうして満たしていくかに関わっていて、
テクノロジーの進化と人間の欲求、
そして、それを媒介する金融テクノロジーがあいまって発展するものです。
歴史が繰り返しているから、多分真実です。
そうしていつも「このビジネスの世界はアマチュア選手権だ」と思うんです。
僕はサッカーをやっていたからよくわかるのですが、
スポーツの世界は、才能と本気が世界レベルでないと成功しません。
なのに、多くの人は大学を卒業して、ビジネスの世界に入るともはや努力をしない。
僕は才能が無くても、人の倍は働きました。時間をかけただけ。
でもそれだけで、前職では有名人だったし、給与も高かった。
世界一じゃないけど、市の代表くらいは難しくなかったし、
そして、今は何とか会社も経営しています。完全にアマチュアの世界ですよね。
話は戻りますが、日本のビジネス界で働く人がよりプロフェッショナルになるためには、
競技人口が増えることが大切だと思っています。
なぜアメリカや中国がオリンピックのメダルが多いのか?
これはすごく単純な理由で、競技人口が多いからです。
日本が元気になる――世界で戦える日本になるためには、
スタートアップをする競技人口、つまりビジネスマンが増えることが重要。
だから、今のスタートアップブームはとても微笑ましいなって思っています。
世界で通用するサービスが必要だから、
シリコンバレーやサンフランシスコのベイエリアでの挑戦も、微笑ましい。
でも、本当に成功したいなら、真剣に考えた方が良いとも思っています。
ビジネスの世界は、ギャップがあればあるほど多くの利益が生まれるものだから。
そのギャップは何か?
技術優位性、知的優位性、法律のスキマ、言語優位性、色々あるでしょう。
でも、陳腐な例ですが、Google翻訳やSiriというテクノロジー、
インドや中国の人口に叶わない日本では、知的優位性は諦めた方が良いと思います。
本気で世界で通用するスタートアップをしたいなら、
アプリだけ作っている場合じゃない。
それは、多様な人種・文化を受け入れている、アメリカに住んでいる彼らの方が得意だと思います。
純粋な日本人で、英語も喋れない僕が世界で通用するサービスを創るにはどうすべきか。ヒントを貰うために成田空港で買ったのは、あの『ヨシダソース』の吉田社長の本でした。
アメリカで成功している人なんて他にもいっぱいいるし、
そんなに大成功だという程じゃないよ、と思う人もいるかも知れない。でも、何かヒントがあるかもと思ったんです。
ここでヨシダソースを知らない人ために軽く説明をしておくと、
アメリカでイチローに次いで有名な日本人らしいです。
彼の言葉の中で、僕が惹かれたことをいくつか書き留めておきます。
有名なエピソードですが、単身アメリカに渡りギリギリの生活をしながらカンフー道場を運営していたとき、
クリスマスのプレゼントも買えないほど貧乏だった吉田さんは、お母さんが作ってくれた、大好きだったBBQソースを、周りの友達や知人にプレゼントしたそうです。
それがアメリカ人にものすごくウケて、
ソースを製造販売する会社を興すに至ったそうです。
そしてソースのネーミングを「グルメソース」としたと。
周りは大反対。テリヤキソースの方が良い!ということだったそうです。
オリエンタルだし、当時テリヤキの知名度もあったから、わかりやすいと。
でも、当時の吉田さんは、
「テリヤキソースにすると日本、韓国、中国の食材が置かれるお店しか置いて貰えない。
アメリカで成功するためには、王道のグルメソースにした方が良い。
そうすれば、桁違いに売り上げが上がる。」と言ったと。
そう、「桁違い」に。
今の僕には、ピッタリのエピソードでした。
SHIFTのテストは、きめ細やかなシステムにはとても大きなバリューがあり、
必ず上手くいくし、アメリカでもウケると思っています。
それは今回の出張でも実感しました。
僕のプレゼンを聞いてくれた方がみんな、
「ニーズは膨大で、そしてとても困っている。SHIFTのテクノロジーは面白い」
と言ってくれたんです。
でも、このまま日本向けのSHIFTのサービスをアメリカに持っていっても、
ビックなスケールになるかというと、そうじゃない。
まさにテリヤキソースなサービスです。どうせならもっとビックにやりたい。
そう、グルメソースを狙わないと。
1,300円の本だけれど、効果としては数百億の効果があると思います。これだから、出張のときの読書は止められない。
この本、他にもさまざまなエピソードがあり、まさに僕が日本でやってきたことを絵に書いたような本でした。
とても面白いので、時間があれば一度読んでみるのはいかがでしょうか?
……とまあ、偉そうに言っていますが、これからなのでとにかく走らないと。
そうそう、企業にまつわるエピソードと言えば、こんなMBAの授業に関する話を知っていますか?
「会社経営は、同じ仲間をバスにのせて走るのと一緒です。目的地に行くのに、あなたならどうしますか?」
全米でも優秀な頭脳を持った生徒は
「まず、地図を手に入れ、障害が無いかを調べ……」と、
どんどん理論展開していくそうです。そう教え込まれているから。
でも、先生は「さっそくバスに乗って運転するよ!」と言うそうです。
そうすると生徒は、「ガソリンが切れたらどうするんですか?」と質問する。
先生は、答えます。「バスを降りて、1人で押すんじゃ。」
生徒が問う。「そんなの非現実的じゃないですか?無理です。」
するとね、先生はまたこう答えるそうです。
「アホなヤツが一生懸命バス押してたら、
自然と1人、2人と一緒に押してくれるヤツが現れるんじゃ。」
何が言いたいかというと、いろいろ言いましたが、
起業って、案外そんなもんだってこと。ちゃんちゃん。
2012.03.23 Masaru Tange(丹下 大)
※「大の視点」とは、SHIFTの代表取締役社長である丹下 大が
当時SHIFTメンバーに向けて送ったメールを一部社外公開向けに再編集したものです