大の視点/中国出張の報告

  • facebook
  • twitter
  • hatena bookmark

SHIFTのみなさん

丹下です。
昨日から大連に来ていますが、今は上海のホテルにいます。
今回の視察で、学んだことについてみなさんに共有できればと思います。

視察の目的は、以下の3つです。
・中国でのテストセンター開設に関する調査
・中国でのテストのアウトソーシング事業の可能性
・またそれに関係する人脈づくり

今回訪問した日本と大連の時差は1時間。
東京から飛行機でたったの3時間の距離にあります。
大連は、中国の東北地方の都市で、人口600万人という結構な大都市です。

日本との付き合いについて少し触れておくと、第二次世界大戦の際、
満州国として中国に進出した日本が統治したのが大連です。

そういった歴史があるので、ともすると反日感情があるのかなと思いきや、
実は日本人がとても好きな人が多いんです。
満州国を作った際に、日本が鉄道を敷き、教育機関を作り、学校に行くことが
できていなかった農民に教育の機会を与え、産業を作ったからです。だから、
日本人を尊敬してくれているんですよね。

また、日本語を話せる人が30万人ほどいるともと言われており、
大連では年間3,000人の日本語を話せる学生が卒業しています。
例えば中国でも屈指の「大連理工大学」は、機械工学科に行くと4年間は機械を学び、
さらに1年間、日本語を学んでから計5年で卒業するようです。こうした背景もあり、
大連は、今や日本の企業のアウトソーシング先としてNo.1となっています。

また、大連の中でも「ソフトウェアパーク」というIT産業の地域があり、
なんと、11万人(980社)もの人が働いています。一口にITと言っても、
ソフトウェア開発からBPO、コールセンター……なんでもあります。

町全体がIT企業のオフィスになっており、次から次へとビルが建っています。
オフィスの家賃は1平米1日2元らしく、月額にして日本円に換算すると、
100平米のSHIFTの東京オフィスくらいで9万円程度です。
これは、東京の10分の1程度の金額です。

電気代もそんなに高くないようですが、ただ、インターネット回線がすごく高いです。
普通にインターネットを引くだけで、月4,000元(約5万円)。
セキュリティを気にする日本企業とのやり取りだと専用線を引いているようで、
なんと月4万元(約50万円)だそうです。

人件費としては、新卒で2,200元/月(28,600円/月)。
これが社会保険とかで1.5倍になり、約4万円/月。これが最低給与です。
これにプラスして少しの能力給をあげるようで、総じて5万円/人ほどは掛かるようです。
(ただ、これは日本語が話せる程度の中流レベルの人だそうです。)

それでも月5万円の給与なら、安いと思う人も多いかもしれませんが、
中国は毎年約7%の成長率を遂げています。

ただ、これは中国に13億人いる人口全体の成長率であって、
沿岸部(北京、上海、大連)はうち人口3億人程度で、個人GDPも日本人とそこまで
変わらないと言われています。しかし一方でこの3億人だけの成長率を見ると、
その率は20%ほどになっていると思われ、
つまり、これはシンプルに考えると毎年給与が2割上がっていくということです。

と言うことで、新卒を5万円で雇っても5年したら倍の10万円/月になり、
10年も経てばさらに倍の20万円/月になるという環境のようです。
賞与は会社の規模にもよるようで、だいたい1ヵ月~2ヵ月分。
年収でいうと新卒で90万円、32歳で250万円って感じでしょうか。

ちなみに、新卒採用の主な手法は企業が大学に直接採用活動に行くらしく、
学生の思考としては日本みたいに大企業一辺倒というよりも、
仕事があるならすぐに就職するという文化が強いようです。
良く言えば決断力が高い、悪く言えばキャリアをあまり考えていないとも言えます。
中途採用の紹介手数料は、年収の10%か給与の2ヵ月分だそうです。
日本は35%程度かかるので、もっと高いですが。

さて。話を大連の産業についての話題に戻します。大連がここまでの成長率を
実現しているのは、Neusoftという中国No.1のIT(SI)企業が大きく影響しています。

Neusoftの本社は遼寧省瀋陽市にあり、
瀋陽にある東北大学の教授だった劉さんが起業し1993年に設立した会社で、
1996年には中国のソフトウェア会社としては初めて上海証券取引所に上場した会社です。

大連には、そのNeusoftが政府と一緒に資本を出して作ったソフトウェアパークがあり、
Neusoftの大学までありました。広大な芝生のキャンパスの大学に、お城のような
Neusoftのオフィスがありました。
すごすぎます。

中国でビジネスをする上で大切なのは何かと聞いたらとにかく政府と仲良くすることだと。
中国は、土地を国が持っているからなんですね。役人は商売の仕方は知らないが、
土地や行政の権利は持っている。
商売を知っている経営者と組んで儲けるというのが、当たり前らしいです。

また中国人は55もの部族が集まった集合体で、過去の歴史から他国に攻められることが
多かったということもあり、基本的に、他人を信用していないそうです。

中国人が大切にしているのは、家族・地域・学閥というネットワークらしく。
信用した人としか仕事しないそうです。そうでないと、騙されるから。

理にかなっていますね。

また、「ソフトウェアを中国マーケットで売りたい」という
日本からの依頼も多いらしく、かなり苦戦しているようです。

理由は
・中国市場には合わない価格
(日本製は高い)
・営業コストがかかる(誰が顧客か手探り)
・結局、中国人も食事をしながら顧客を開拓するので費用がかかる
・最大の理由は、資本を渡さないから
とのこと。

中国人は、今は株式市場が日本のバブル景気のような状態です。
つまり、他のビジネスをすれば株式上場で儲かるのに、株も貰えない日本の企業の
手伝いなんてしないと。

これもかなり分かりやすいですね。そりゃそうだ。

話は変わって、今日の朝は、
大連ソフトウェアパーク内にあるとあるソフトウェア開発会社に行きました。
日本からのオフショア開発を主としている会社で、
規模は小さいですが、50人程度の会社です。

社長は、大連理工大学を卒業した社長で、会社を経営して10年ほど経つそうです。
僕と同じ年で、日本語も問題なく話せます。

その会社は、大学の同級生だったエンジニアと一緒に起業したそうで、
C言語やJava、.Net系などなど、生産管理ソフトや金融系システム、
ゲームまで……なんでも手掛けるエンジニア集団です。

転職の激しい中国で、会社を起業して10年間で辞めた人はたったの1名。
すごいですよね。社長も、まさに良い人!という感じの方でした。
さっそくSHIFTの会社紹介をいつものようにデモを交えてやったら、
すごく反応がよく、「これは中国でもニーズがある」と言ってもらえました。

また、ゲームやアンドロイド系の開発も出来るようでSHIFTの発注先として、
アンドロイドのオフショア開発なども柔軟にやってもらえそうです。

と言うことで、さっそく意気投合し、楽しくミーティングを終えることができました。
それから、大連を後にして、上海にある他のゲーム会社を訪問するために
大連空港に向かいました。

ここからが中国のすごさなんですが、
飛行機は12時フライトの予定が出発したのが何と夕方の16時。
4時間もの遅れです。これはまだ序の口らしく、
案内してくれた方によると、昨日北京から大連に戻るのに12時間遅れたそうです。
中国では、国内線が遅れるのは日常茶飯事らしく、とにかく空港で待ちました。

そのお陰で、せっかく上海で予定していたゲーム会社の訪問が1件キャンセルに……。
そのゲーム会社さんも、「国内線が遅れるのは当たり前だ」と思ってくれていて、
「何時間でも待ちますよ」って言っていただいていたのですが、
上海市内に着いたのが19時。さすがに断りました。

そして、実はこのメールを書いて3時間。結構疲れました。
夕食も食べず、もう疲れたので寝ます。

というわけで僕は、引き続き中国で、
とにかく人脈づくりとSHIFTの可能性を探ってきます。
明日の報告を楽しみにしておいてください。

2011.06.10 Masaru Tange(丹下 大)

※「大の視点」とは、SHIFTの代表取締役社長である丹下 大が
 当時SHIFTメンバーに向けて送ったメールを一部社外公開向けに再編集したものです

この記事をかいた人はこちら