大の視点/人類最大の発明「人類の最大の発明は貨幣である」

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SHIFTのみなさん
久しぶりにブログを書いてみました。

実は前職のとき、毎日僕を悩ませていたことがあります。
理系で育った僕にとって、質量保存の法則が当たり前だと思っていたとき。
社会に出て就職し経済に触れるようになると、お金に関して深く考えることが多くなりました。

GDPって何?国力って何?
なんで、GDPが毎年成長するの?
質量保存の法則が成り立つのであればGDPが伸びるということは、あまり理解できない。

でも人口が増えると、それを消費(もしくは生産)する行為が増えるから、当たり前だという意見もある。

でもなんで??

たぶん人口が増えなくてもGDPは伸びるし、むしろ日本は人口減っていても、若干だが伸びている。そして何よりも、どこかの会社が儲かって、どこかの会社が儲かっていなくて、質量保存の法則が成立してれば、ゼロサムだよねって。

……でも、基本GDPが成長しているので、ゼロサムじゃないんだよねって。

この難問の答えが自分の中で出るまで、数年かかりました。「あらゆる工程は短縮できる」という難問を解くのに2年。「コミュニティには2:6:2の法則があって、この6割に何をすれば発展するのか」という問題を解くのに3年。
この難問の答えはサラリーマン人生を終えて、会社経営をするようになって初めて分かりました。なんと、その間6年ほどもかかっています。

ここからは私的な見解なので、正しいかどうかは分かりません。

この問題を説明するのに、僕は人類が創造された時代まで遡って考えました。
僕の中で、人類の発展でもっとも大きな発明は、お金だと思っています。

火をおこすこととか、蒸気機関の発明とか、IT革命とか他にもいろいろありますが、僕はお金の発明がもっとも偉大であり、人間だからこそ生まれたものだと思っています。

お金って、ネガティブなイメージもあるかと思いますが、僕はそうは思っていません。人類がまだ、貨幣制度がなく海で魚を獲り、家族を養っていたころを想像してみてください。当然、魚を保存できる技術など無い当時は、魚は神の恵みであり今日食べる物しか獲る必要はなかったのです。
だって、腐るから。

でも、魚が獲れる日と獲れない日があります。毎日の食が安定せず、天候にも左右されますし、何よりも魚を獲ることができる人が重宝がられていたと思います。もし、自分が魚を獲る能力を持っていなかったら?木にも登れず、ヤシの実を獲る能力が無かったら、どうするのか?家族の中で魚が獲れる人、もしくは集落で魚が獲れる人に恵んで貰っていたでしょう。

その人が
素晴らしく絵を描くことが得意でも、
素晴らしく楽器を弾くことが得意でも、
素晴らしく計算ができたとしても、
評価はされないんです。
魚を獲れる者が唯一報われる世界です。

ただ、ここで、
魚を保存する技術が生まれました。
それがお金(貨幣)です。

魚を貨幣に換えることで、多くの魚を獲っても無駄になりません。買ってくれる人がいるから。そして天候が悪くて魚が獲れないときに、その貨幣で山の恵み(バナナ、ぶどう、オレンジ、芋など)を得て、食糧にすることができるようになったのです。

そりゃ、良かった。

でもGDPが増加する、エントロピー増大の法則を説明しているわけじゃないよね?って思いますね。僕が気づいたのはここからです。

魚をお金に換えることができるようになると、自分の技術が保存できるので効率を考えるようになりますね。「今日は体調が悪いので、漁に出るのは止めよう。」

お金がたくさん稼げると、好きなものをたくさん食べることができますね。そうすると、お金をたくさん稼ぐことを重視するように人間はなりますね。そうDNAにインプットされて生まれてきているので。でも、今日の本題はそこじゃありません。

例えば、今日獲れた魚(鯛でも、マグロでも良いです)をそのまま、村の集落で魚が獲るのが下手な人へ渡していたとしましょう。

すると、その魚は1匹100円に交換できました。(通過単位はどうでもよいのでわかりやすく円で表現します)毎日毎日、魚を獲っては100円に換えてもらいます。そうしてその100円を芋に替えるのは、良いことです。しかし、それだけでは経済は発展しません。今日1匹獲れるところを10匹獲るために、餌の種類を変えたり仕掛けを変えてみたりと、工夫しますよね。これは単なる効率化です。

でも、100円の魚を150円にして売れたら、その方が良いですよね。

漁師はある日、山に住んでいる人に「腐りやすいので、魚の内臓を取り出しておいてくれ。すぐに食べられるように、切り身にしてくれ。」と言われました。漁師は、これだ!と思います。

そうです。ちょっと頑張って切り身にするだけで、100円のモノが150円になって価値が増大するんです。同じ魚なのに。質量保存の法則では、質量が内蔵の分だけ減っているので、価値が低下して当たり前。でも、ここでは価値が増大しています。つまり、経済が発展するには、実体商品と金融商品とが融合しながら発展していくのです。そのどちらからが全てではありません。これは、すごく明快に世の中の構造を表現していると思います。

今日、僕が言いたかったのは、貨幣の発明によって人類が幸せになったということです。繰り返しになりますが、お金持ちになるかどうかではありません。貨幣が生まれたことにより、魚を獲る人、魚を加工する人、魚を運搬する人、山の幸を獲る人など、分業化されてきたのです。もっと言うと、食物を獲る人だけではなく、絵を描く人、楽器を弾く人、計算をする人という、より多くの分業化を生むことができたのです。SHIFTがソフトウェアテストという仕事をやっていることも、ソフトウェア開発における分業化の最たる例です。

貨幣が生まれることで、分業化が生まれ、そしてその人本来が持っている才能(価値)を、世間の人が認めてくれる公平な世の中になったということです。

僕は、この世の中がとても好きです。
これは、草や木などの植物や他の動物にはできないことです。

今の日本では、
人口のたった約3%の人が米を作っており、25%くらいの人がモノを作っており、あとの70%強の人はサービスを作っています。

僕たち人間が草や木のように養分や水だけで生きられるなら、この3%だけが実であり、残りの97%は虚だと思っています。生きる上では、必要無いのですから。だから実は、周りに見えるもの、ほとんど全てが虚(仮想現実、人間が創り出した偶像)です。だからこそ、人間の良さは創造できることであり、技術を生み出す能力であり、GDPも人間がいれば勝手にエントロピー増大の法則に従い、増え続けるものであり、不景気など無いということに気付きました。

人間社会に生存するものとして、こうした原理原則を知っていることで多くの経済合理性を説明できるし、この法則に従って、僕は会社経営をしています。人間は個性があって当たり前だし、その個性を正当に評価できるDNAをもともと持っているんです。SHIFTの採用でも、キャラクター採用という言葉が使われたりしますよね。営業が得意な人は営業、プログラミングが得意な人はプログラミング、デザインを得意な人はデザイン、ひたすらドキュメント整理が得意な人は、それを仕事にすればいい。一番得意な分野で価値貢献しないと、評価されません。

SHIFT社内でもよく言いますが、
会社はチームなので、
チームで勝てば良いんです。

僕は、たまたま面白いことを言ったり、
人を口説いたりするのが得意なだけです。
マネジメントは得意じゃありません。

会社の社長という役職も、
単なる組織の機能です。
上下じゃなく、並列です。

僕は、会社の指揮者です。
みんなが良い音を奏でられるように、
どのタイミングで
バイオリンを弾いたら良いのか、
ピアノを弾いたら良いのかを調整する。
ただそれだけです。

チームで、偏差値70が出せれば良いんです。
経済の原理原則から、会社経営まで応用できますね。

事象が解決できて再現できる方程式に落とせることが、
僕にとって興味の対象なのかもしれません。

2012.10.04 Masaru Tange(丹下 大)

※「大の視点」とは、SHIFTの代表取締役社長である丹下 大が
 当時SHIFTメンバーに向けて送ったメールを一部社外公開向けに再編集したものです

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