2021年7月6日、「ビジネスを『賢人』から学ぼう」をキャッチコピーに、オンラインで開催された「SHIFTゼミナール」。密談のゲストは、株式会社ティーケーピー代表取締役社長 河野貴輝さん。空間シェアリングビジネスのパイオニアであるだけでなく、最近ではワクチン接種会場を無償提供したことで大きな注目を集めたティーケーピー。そんなティーケーピーはどのようにコロナ禍を乗りこえ、そしてどんな未来を描いているのか、丹下が河野さんに迫りました。貴重な話が満載の「密談」のポイントをまとめていますので、ぜひご覧ください。
「密談」のまとめはこちら!
丹下から最初の質問:コロナ禍を振り返って、どうだったか?
- 丹下が「尊敬する経営者の一人」と河野さんを紹介し、「密談」がスタート
- 河野さんはこれまでウェビナーに登壇することはあったが、SHIFTゼミナールのように1時間も話すことは稀とのこと
- そんな河野さんにコロナになってからの1年について、まず丹下が質問
- 河野さんの回答は「リーマンショックをこえるだろうと予測をしていましたが、すさまじい1年でした」
丹下の質問:コロナ以前、日本リージャスホールディングスや台湾リージャスをM&Aしたころ、河野さんはどんな心境だったのか?
- コロナ以前、ティーケーピーはM&Aなどを実施し、飛ぶ鳥を落とす勢いだった
- 丹下が「以前より河野さんを突き抜けた経営者として見ていました」と話し、上記の質問
- 「今後、さらに会社を大きくするには何をしていこうか考えていましたね」と切り出す河野さん
- いままで以上にティーケーピーを大きくしようと思ったら、M&Aか海外展開しかない
- 以前はこの2点に力を入れていこうと考えていた
- 日本リージャスホールディングスのM&Aには500億円ほどかかった
- 当時、ティーケーピーの売上は350億円ほど
- 「普通じゃ、(その金額で)M&Aをしませんよ」と笑う河野さん
丹下の質問:リージャスをM&Aをした経緯は?
- 会議室のビジネスについて、まず河野さんが説明
- 企業がオフィスを借りる方法は時間貸し、月貸し、賃貸オフィスとある
- もともとティーケーピーは時間貸しがメインだった
- しかし、月貸しもティーケーピーのマーケット
- 当時、その領域にどのように参入するのか検討をしていた
- そこでM&Aをするチャンスがないか世界中をチェック
- リージャスの情報をその際に得た
- リージャスはシェアオフィスなどが日本トップクラスのシェア
- 「そのような企業と組むということが大事」と河野さん
- 河野さんのNo.1戦略に則って買収に即座に動いた
丹下の質問:M&Aをする際、資金調達はどのように行ったのか?
- 河野さんは2週間で500億円を用意しようとした
- 「なかなか大変でしたよね」と河野さんは苦笑い
- リージャスの本社はクロスボーダーのロンドン
- 資金がないことには話が進展しない
- 資金を用意するのに「そうとうシビレました」と河野さん
<<資金調達まで>>
- 当時、ティーケーピーでは余剰資金を勘案してもM&Aに必要な資金が足りない状態だった
- そこでブリッジローンで資金を用意することに
- メインバンクなどに掛け合うところからスタート
- 「普通、銀行は貸してくれないですよね」と丹下
- 当時、ティーケーピーの時価総額は2,000億円前後
- 河野さんは「僕の株、全部担保に入れてもいいから貸してくれ!」という勢いだった
- 「銀行に、人生を賭けたM&Aだということを理解してもらえた」と河野さん
- 河野さんの熱意が伝わり、どうにか500億円を用意することができた
丹下の質問:台湾リージャスもM&Aしたが、外資系の企業がジョインして苦労したことは?
- 河野さんがすぐにあげたのは「国際会計基準(IFRS)」
- 「これは日本と違いすぎますね」と河野さん
- 日本はコンサバティブ
- 指標をIFRSに変更するのは大変
- ティーケーピーがお付き合いしているのは日本の銀行
- IFRSにしたところで日本基準に戻す必要があった
- しかし日本基準は、海外の投資家に理解してもらうには不都合
- そこでKPIをEBITDAに
- EBITDAがいくらか新しい指標を設けて、IRをはじめた
- 日本基準のPLとIFRSでいうPLとで乖離があり、問題がいくつも噴出
- 実態とずれている
- EBITDAはキャッシュが入ってくる話
- キャッシュが入ってくる限り会社は存続する
- 実態重視でいくことに決めた
丹下の質問:M&A後のPMIは順調か?
- 「大変ですよ」と河野さんは笑いながら回答
- 現在、リージャスの創業者がティーケーピーの社外取締役
- 会議は全部英語
- 言葉の壁や考え方の壁を感じることもある
- 海外のオーナーや投資家に、慣習をこえて理解してもらうのは大変
丹下の質問:M&Aをした当時は、どんな状況だったか?
- 「ティーケーピーの勢いがすごかった」と河野さんは回想
- ティーケーピー単体で営業利益80億円(年間算)が出ていた
- 台湾だけではなく、アジア全体を狙う勢いがあったとのこと
- コロナぎりぎり手前で河野さんがブレーキ
- 実は、買収手前の案件もあった
コロナ直後、顔が真っ青になった
丹下の質問:コロナの脅威を実感したのは、いつぐらいだったか?
- 河野さんは「いろいろ嫌な予感があったんです」
- リージャスの世界大会があり、河野さんはギリシャに
- その旅路の途中、転んで脚を骨折
- 骨折したまま、2020年2月に世界一周IRを敢行した
- ニューヨークに滞在したときに風評もあり、アジア人への風当たりの強さを実感
- そのころ、アメリカ人はコロナに対して日本人よりも反応していた
- 帰国後、世界ではロックダウンの話が
- 肌でその動きを察知できたのは大きかった
- そしてアメリカのロックダウンを見て、「これはやばいと思いましたね」と河野さん
<<コロナ直後の様子>>
- コロナ直後、2月の決算でティーケーピーの売上高は600億円弱
- 毎月コストがかかっているため、ひと月数十億円の赤字を覚悟した
- 3月の時点であった現金もすぐになくなることを予測
- 河野さんは「顔が真っ青になりましたね」
- まさに、緊急事態宣言が出たころのできごと
<<急落した株価>>
- コロナ前まで、ティーケーピーの株価は6,000円ほど
- コロナ後の3月には910円まで株価が急落
- 2,000億円以上あった時価総額が、300億円台まで落ちた
- 「丹下さん、こういうことがあるんだって覚悟しておいた方がいいですよ」と河野さんは冗談交じりに忠告
- 丹下は即座に「河野さんじゃないと耐えられないです!」
- コロナ直前に公募増資で250億円ほど集めていた
- リージャスを買収するとき500億円、ブリッジした分の半分が優先株
- 250億円は普通株に転換する必要があった
- 「いまとなっては早めにできてよかったですね」と河野さんはしみじみ
丹下の質問:2020年4・5月はどのような対策をうったのか?
- 「クマが冬眠するときは脂肪を蓄えますよね」と河野さんは前置き
- 同様に、キャッシュを蓄えて冬眠しようと思った
- そこで、河野さんがまず行ったのは経営するアパホテル以外の不動産をすべて売却
- 銀行にも貸越枠を組んでもらい、それらの総額250億円を用意
- もととも保有していたお金とあわせて、ひと月30億円が赤字でも、1年程度は会社を存続できるようにした
- 「1年間は冬眠してきたが、そろそろ起きないと」と河野さん
- そして、5月にワクチンの接種会場を無償提供
- 世の中から大きな注目を集めた
丹下の質問:冬眠中、商いはあったのか?
- 河野さんの回答は「全然ないですよ」
- リージャスは以前と変わらなかったが、ティーケーピーは売上が激減
- ケータリング需要がなくなった
- 100人規模の会議室の貸し出しはなんとかなったが、500人や1,000人規模の宴会場はお客さんがいない状態
- しかしその家賃はかかり、弁当工場やケータリング工場のコストもかかった
- 「断腸の想いで再構築しました」と河野さん
丹下の質問:現在の状況は落ち着いているのか?
- 2月決算の3Q(2020年9・10・11月)、いろいろなコスト削減の効果が出て黒字浮上
- 2020年12月、2021年1・2月は緊急事態宣言の影響で赤字に
- しかし「だいぶコスト体系が変わったので、浮上しやすい状況になってきています」と河野さんは今後に自信
丹下の質問:現在、オフィスの時間貸しと期間貸しの両輪がしっかり動くようになったのか?
- 河野さんは「そうですね」と回答
- リージャスはハイブランド
- 現在、ミドルブランドの期間貸しも出していこうとしている
- そのブランドがティーケーピーの「Work X Office」
- 時間貸しのオフィスを期間貸しするというサービス
- ティーケーピーの会議室の稼働を上げていく
丹下の質問:オフィスの期間貸しのニーズは増えているのか?
- コロナで在宅勤務が増え、年単位でオフィスを借りる必要がなくなった
- そこで、丹下より上記の質問
- 河野さんは「ニーズは増えてきています」と返答
コロナを経験して新しいビジネスモデルに出会ってきた
丹下の質問:コロナ禍、コストを抑えるために、どんな工夫をしたのか?
- 少し話題を戻して、丹下がコストについて質問
- 河野さんはこれまでを振り返り、コスト削減の工夫を紹介
- コロナ禍の最初のころは、賃貸解約しやすいところから解約していた
- その過程でティーケーピーが借りていた会議室の家賃が安いことに気づいたとのこと
- 解約すると、すぐに次のテナントが決まっていた
- そこでむやみに会議室を解約することに河野さんは急ブレーキ
- ティーケーピーが借りていた会議室は、リーマンショック後に安い金額で借りていたもの
- 「浜松町にあった創業したオフィスも、そのときなくなっちゃいました」と河野さんは残念そう
- そして河野さんは「また取り返したい」
丹下の質問:コロナ禍で、従業員はどんな動きをしたのか?
- 河野さんは「しっかり役割を分担しました」と語り、当時の様子を紹介
- コスト削減は専属の部隊がいた
- 新しいニーズをつかもうと積極的だったのは営業部隊
- オンラインと会議室を使用したハイブリッド型の新しいウェビナーや、試験会場や持続給付金の受付会場などのニーズも発掘できた
丹下の質問:試験会場などは、以前からニーズとしてはあったはず。その割合が増えたのはなぜか?
- これまで会場を使うのは民間企業が多かった
- 売上が高いこともあり、そちらをどうしても優先していた現状がある
- コロナをきっかけに公的なお客様や教育機関を深堀りして、会議室を使ってもらうように動いた
丹下の質問:今後ますます伸ばしていけそうな領域はあるのか?
- コロナによりさまざまな構造が変化した
- そのなかでティーケーピーが狙う先を丹下が質問
- 「いろいろあります」と河野さん
- もちろん、ビフォーコロナのような世界に戻ってくれるのがベストシナリオ
- コロナを経験して新しいビジネスモデルに出会ってきた
- ベストシナリオ通りにいったとしても、新しいチャレンジをしたい
起業するとき、ビジネスモデルは深く考えていなかった
丹下の質問:河野さんが自分自身を分析すると、どこが一番の強みなのか?
- 「スピード感ですかね」と河野さんは自身を分析
- 「思い立ったが吉日」で動いていく
- 「挑戦と撤退の決断」とさらに河野さんは自身を分析
- やってみてダメだったらやめる
- 「そんな勇気をもって、とにかくやってみることを大切にしている」と河野さん
丹下の質問:起業しようと思ったのは、いつなのか?
- この質問を受け、河野さんは自身の経歴を紹介
- ティーケーピーを設立したのが2005年8月
- SHIFTが生まれたのが2005年9月
- 「1ヶ月違いですね」と河野さんはニッコリ
- もともと河野さんは伊藤忠商事で働いていた
- そのときに、ベンチャー企業(日本オンライン証券)の立ち上げに参加
- 現場に行ってみんなで徹夜しながら過ごしたのが、ベンチャー企業との出会い
- 伊藤忠商事を退職後、上司とつくったのがイーバンク銀行(現楽天銀行)
- ホップ・ステップときた
<<ティーケーピーを起業するまで>>
- 河野さんのおじいさんが事業をしていたため、事業をすることの面白さは知っていた
- 「伊藤忠商事に入社しましたが、独立したいという想いは強かったんですね」と河野さん
- 伊藤忠商事にいるときに、オンライン証券をつくったのが4年たってから
- イーバンク銀行をつくってまる4年
- そしてティーケーピーを設立
- 本当に、ホップ・ステップ・ジャンプといった
- 大学生のときに起業したわけではない
- エスタブリッシュな会社に在籍し、ネットベンチャーを経験して、満を持して創業した
丹下の質問:なぜティーケーピーをつくろうと思ったのか?
- 河野さんが立ち上げを経験した企業とティーケーピーの事業は違う
- どうやってティーケーピーの事業に辿り着いたのか丹下が質問
- ティーケーピーをつくったとき、河野さんは32歳
- 会社を立ち上げるなら、インターネットを使ってビジネスをしなくてはいけないと思った
- 当時、インターネットでビジネスを立ち上げる人は、音楽やゲームなどマニアックな方向へ向かう傾向が
- 河野さんはエンジニアではない
- 自分にできないことをビジネスにして、誰かに頼るのは違う
- そこで、インターネットをツールとして利用し、リアルなビジネスに応用することに
- そして、取り壊しの決まっているビルや使っていないスペースをBtoBで時間貸しの会議室にして、インターネットだけで集客することを思いついた
<<ティーケーピー創業時の思い出>>
- 「六本木の取り壊しの決まっていた3階建てのビルが最初の会議室です」と河野さん
- そのビルは2、3階のテナントは立ち退いたが、1階の飲食店が出ていかない状態だった
- 飲食店が出ていくまでの間、空いているスペースを借りたのがティーケーピー1号店
- 実印と印鑑証明、通帳をもって行き、お金があることを証明して「占有はしないので安い値段で貸してください」とビルのオーナーと交渉
- 安くこのスペースを借りたのが出発点
丹下の質問:ビジネスモデルやマーケットサイズをしっかり考えてから起業したのか?
- 「まったくそこまで考えていなくて、ボールはキックしてから走るものだと思っていましたね」と驚く返答が河野さんから
- 「小さく生んで大きく育てる」という伊藤忠商事の格言があるが、それ通りにやった
- 実は、伊藤忠商事を辞める時に人材紹介会社に登録
- そして自分自身のマーケットバリューを確認
- もし失敗したら、その年収に戻ればいいと思っていた
- 「割り切りですね」と笑う河野さん
丹下の質問:創業メンバーはいるのか?
- 創業したのは河野さん1人
- そして、雪だるま式に人が増えていった
- 「最初は1人でやらないとダメなんですよ」と河野さんが強調
- 1人ではじめて、桃太郎のように仲間を増やしていくべき
- 自分ができないから人を雇っていくことが大事
- 共同創業者をつくると、失敗する可能性が高い
- まずは自分でやれる分野ではじめて、誰かを雇うことで自分がもっといい仕事ができるというときに、人を雇うもの
本格的に意識してから、わずか10ヶ月で上場
丹下の質問:河野さんは天才肌の経営者ではないか?
- 普通の経営者はいろいろ学びながらやることを、河野さんは感性でわかっていると丹下が分析
- 丹下の質問に河野さんは恐縮
- そんな河野さんはメンターをつけずにやった
- そして、マザーズ上場時の話題へ
- 上場時、河野さんが保有する株の比率は80%
- マザーズでは株の比率を75%以下にしないといけなかった
- 「本当は上場する気がなかったんです」と河野さん
- 上場するまでは赤字になったことがなかった
- マザーズだったら25%の流動性でよい
- 67%以上の株式を自分でもって上場できる
- いざとなったら上場をやめることまで考えて、マザーズに上場した
丹下の質問:上場はいつから意識したのか?
- ティーケーピーが上場したのは2017年3月
- 河野さんが上場を本格的に意識したのは、なんとその10ヶ月前
- 「10ヶ月で上場したんですか」と驚く丹下
- 第一期から監査法人を入れるなど、上場する準備はしていた
- リーマンショックのときに上場を一度断念した経緯もある
- 間接金融に頼ってお金は厚手にしていたため、当初は上場する気がなかった
- しかし、当時、民主党政権が終わって自民党政権に戻り、マーケット環境が変化
- この変化が上場のタイミングと河野さんは判断
- 2016年4~5月は非常に悩んだが、「上場しないより、上場した方が結果的にいいだろうと決断しました」と河野さんは回想
丹下の質問:河野さんが感じたマーケット環境の変化をもう少しかみ砕くと?
- 当時、ティーケーピーはホテルの宴会場など、新たな事業に参入
- 伸びてきているタイミングだった
- アベノミクスがあり景気がよくなる予感も
- リーマンショック後に安く仕入れていた不動産もお金を生むようになった
- これらのポイントから上場を総合的に決断
- 「景気が悪いときは逆張りで、景気がいいときは順張りで」と河野さんは提言
- この繰り返し
- いまは逆張りのとき
- 仕入れをしっかりして、利益は伸びずともシェアを伸ばす
- そうすればあとで刈りとることが可能
丹下の質問:河野さんは何からインプットしているのか?
- 「本を読むのは苦手なんです」と河野さんが告白
- 本を買うが、なかなか読めないとのこと
- じっと考えるのは無理
- 何かを考えようとスケッチブックをもって山にこもっても何も思いつかない
- 違うことを考えていると、事業のアイデアが浮かんでくる
- 「何かをやっていると、別の何かを思いつくんです」と河野さん
- 「現場の数字を見ると、アイデアを思いつくこともあるのでは?」と丹下が質問
- 河野さんも同調し「数字は大事ですよね」
ホテルは、営業収益を生み出す装置
丹下の質問:ティーケーピーが成長するポイントはどこにあったのか?
- 河野さん曰く「そのときそのときでテーマが違う」
- リーマンショックの後は海外進出を考えていた
- 当時、アメリカ一周をしたが、富裕者層は苦しんでおらず、アメリカが痛んでいないことを実感
- 逆張りの時期と考え、仕入れた
- 震災後は東京、日本にいることがリスクと判断
- そのときの東京の売上比率は7~8割
- 東京の比率を5割まで下げるように動いた
- 日本以外に出ていこうとニューヨーク、シンガポール、上海、香港などに会社を設立
- 残念ながらコロナで多くの会社を畳むことになるが、第1次の海外戦略を実施
- 「この海外進出はいま考えると大きかったですね」と河野さん
<<ニューヨークでの刺激>>
- ティーケーピーがニューヨークで入居したタイムズスクエアのビルは、リージャス、WeWorkも入っていたビル
- 2012年ぐらいからリージャス、WeWorkの存在を目の当たりにし、刺激になっていた
- 当時日本は、土日を含めて残業している時代
- ニューヨークは時間で働き、人種などの多様性も感じた
- そんなアメリカの労働問題にもぶつかり、大変さを痛感
- まさにいま、日本でも同じような問題が発生
- アメリカでの経験が活きている
丹下の質問:ホテルを所有するようになったのは、どんな意識改革があったのか?
- ティーケーピーは借りることでリスクを負わずにビジネスをしてきた
- しかし現在、アパホテルのフランチャイズ経営をしている
- なぜ「所有する」という方向転換をしたのか、その真意を丹下が河野さんに質問
- 「上場前後、お金が余っていた」と切り出す河野さん
- 余ったお金を定期預金にしていてもお金を生むわけではない
- 元々は「もたざる経営」だった
- しかし、銀行から営業キャッシュフローをベースにして借りられるバッファがあるなら、それを使って安定収益をつくっていければ、ストックとフロービジネスのあいのこができる
- そこでホテルを所有することに方針を転換
<<ホテルを所有するポイント>>
- 決してティーケーピーの会議室のビルを買っているわけではない
- ホテルというものを買っているだけで、あくまでアセット
- 普通なら、REITを買えばいいと思われるかもしれない
- しかし、自分達でホテルを買い、自分たちで運営することで、金利収益や配当収益ではなく、売上と営業利益に事業としてもっていける
- 投資だが、営業収益を生み出す装置として使っていくことが可能
- ティーケーピーの悩みは、つねにフローのビジネスだったこと
- 毎時間、毎日、今日利用したお客さんが明日利用するかわからない
- 時間貸しでグルグルまわすビジネス
- ホテルになると、たとえば東京エリアなら「いまの稼働は全体の85%」といったように収益が見える
- しかもアパホテルはパフォーマンスがいい
- 収益が見えるのは安定収益に繋がる
- 安定収益がありながらフロービジネスがあると、フローが落ち込んだときでもベースの収益があれば赤字を被らない
- そういう想いが強かった
- アフターコロナで人が戻れば、ホテルというビジネスは安定化するはず
丹下の質問:ホテルの出店計画はどうしているのか?
- 「ティーケーピーの会議室があるところに、アパホテルをつくらないと意味がない」と河野さんは断言
- 1日会議をしてホテルに宿泊すれば、翌日も会議室を使う可能性がある
- そうすることで本業の売上がアップ
- アパホテルは1人部屋サイズなので、1部屋に何人も泊まるということが少ない
- 会議室とアパホテルは「絶妙に相性がいいですね」とうなる丹下
- 営業利益率が本当に高い
丹下の質問:アパホテルは一等地戦略をとるが、ホテルを建てる際に工夫していることは?
- 会議室があるところにホテルを建てるのがコンセプト
- 変なところに建てないのがポイント
- 病院だったところをホテルに変えたり、新しく建てるだけではなく土地を借りて建てたりして工夫をしている
- これからは、ホテルの売却が出てくるのでは
- 世の中は本業に回帰する動きがある
- ホテルが本業ではない会社が、選択と集中でホテルを売却する可能性が高い
- そこにチャンスはある
ティーケーピーが、新しい企業の形になる
丹下の質問:将来的にティーケーピーをどういう方向にもっていこうとしているのか?
- 「最近、新しい動きが出てきている」と河野さん
- 職域ワクチン接種会場の無償提供もそのひとつ
- 1,000人以上の企業ではないと職域接種ができない
- 1,000人以下の経済同友会会員企業、ティーケーピーの会員企業向けに共同接種会場を設置
- ティーケーピーでオペレーションを行う
- 非常にニーズが高い
- これまではスペースを貸すことにこだわってきたが、今回のコロナで企業の人事部、総務部と太いパイプができた
- 人事部、総務部向けのサービスも考案中
- 面接会場だけではなく面接する人材を出したり、ティーケーピーで試験を請け負い、数字を企業に伝えるなど、いろいろ展開を考えている
- スペース貸しから、集客をしてオペレーションをつけ、コンテンツを入れる企業に変わっていくのでは
<<ワクチンの接種会場>>
- 今回、2週間でワクチンの接種会場を全国につくることができた
- こういうことができるのはティーケーピーだけでは
- 全国にスペースをもっているからこそ一斉に実現できた
- ティーケーピーの会場を使えば、何十万人の単位で人を動かせる
- 今後、企業のイベントなどに応用できるはず
丹下の質問:ティーケーピーのようなコングロマリットにサービスを提供できる企業は、世界にもあるのか?
- 河野さんは「なかなかないんじゃないですかね」
- ここまでスペースをもっていて、人材を出し、収益を生み出す集客力をもって、コンテンツを有す会社と組んでやっていく企業は、新しい企業の形になるのでは
- BPOはBPOでも、単なるコールセンターや事務センターなどではない
- 収益を生み出せるBPOを創り出せるはず
丹下の質問:会社はどんなカルチャーなのか?
- 「短期でいろいろなプロジェクトがあると燃える」と河野さん
- ワクチン接種会場の無償提供は、従業員が一致団結した
- 「このプロジェクトは、久しぶりに感動しました」と河野さんは強調
- 忙しいが、従業員の生き生きした目を見て、ベンチャー魂の大切さを改めて痛感
丹下の質問:今後、株価が大きく伸びるのでは?
- コロナ後には新しいマーケットが生まれてくる
- 「河野さんを見ていると、ティーケーピーが飛躍するイメージがわきます」と丹下
- そして、丹下が上記の質問
- 「まずは収益を戻すことからですね」と河野さん
- アクセルは踏める
- 収益を戻し、新しいソリューションを出すことで、収益の多様化が見込めるのでは
丹下の質問:アパホテルの社長 元谷芙美子氏を社外取締役に迎えた理由は?
- 河野さんは「ティーケーピーの事業、リージャスの事業、アパホテルの事業、この3本柱でいく」と強調
- リージャスの創業者も社外取締役
- アパホテルの元谷氏が社外取締役に就任したのは自然の流れ
- 元谷氏はSHIFTの社外取締役でもある
- 「SHIFTは女性従業員を5割にもっていきたい」と丹下
- そのノウハウを教えてもらうために、SHIFTは元谷氏に社外取締役を依頼した
丹下の最後の質問:日本の経営者に贈るメッセージは?
- 「新しいものにチャレンジして、新しいものを生み出してほしいです」と切り出す河野さん
- ピンチというものは出てくるもの
- ピンチをどうやってチャンスに変えるかに尽きる
- そこには行動あるのみ
- ダメなときはもがくべき
- 「上に伸びないときは、根っこを伸ばせ」と社内ではよく話している
- 冬眠というのは何もしないわけではない
- 根っこを伸ばす時期
- どうしても逆張りと順張りの時期がある
- 逆張りのときは、耐えて耐えて逆張り
- 順張りのときは勢いに乗って、ピークがきたらやめないといけない
- その組み合わせ
- つねに動いて考えて動くべき
- そのなかで失敗ならやめて、いけるものはとことん伸ばしていく
- これが基本
- 不況のときは特に基本に戻ることがポイント
- いまはぜひ基本に戻って逆張りを
- これから新しい世の中が定着する
- 新しい商流をぜひつくっていって、景気がよくなったら波に乗るべき
- 河野さん自身も波にのっていきたい
- 河野さんから素敵なメッセージが贈られたところで、本日の「密談」は終了!