2021年8月10日に開催された、SHIFT恒例の「89(バグ)祭2021」。「SHIFTがつなげる、もっと身近なDX」をキャッチコピーに、さまざまなお客様、従業員が登壇し、20以上のコンテンツがオンラインで配信されました。
そのなかで注目を集めたのが、このスペシャル対談です。福山シティFCからは、副代表の樋口敦さんと、監督を務める小谷野拓夢さんが登壇。「スポーツ×DX! 福山シティFCのデータ徹底活用によるチーム戦術強化への挑戦」と題し、DXをめざす取り組みの背景や、データを活用して得られた効果について、丹下と菅原が迫りました。このスペシャル対談のポイントをまとめましたので、ぜひご覧ください。
広島県社会人1部リーグで躍進!福山シティFC
スポーツとDXについて
- 冒頭、丹下が「アートやスポーツは生きるために必要なもの」と断言し、対談スタート!
- 「スポーツとDXは相性がめちゃくちゃいい」と丹下
- この夏も、いろいろな方法で競技の映像が配信されていた
福山シティFCの紹介
- ここで、樋口さんから福山シティFCについて説明
- 福山シティFCは広島県福山市に拠点を置く社会人サッカーチーム
- 2021年現在はJ6 相当に位置する広島県社会人1部リーグに所属
- 2024年のJリーグ参入を目標に掲げ、日々挑戦している
<<チームの誕生裏話>>
- 代表を務める岡本佳大さんがチームを立ち上げるとき、最初に電話をかけたのが樋口さんだった
- 電話を受けてすぐに「よしやろう!」と決意
- そのやりとりが2018年の12月ごろ
- 樋口さんは「電話を受けたときのことはよく憶えている」と語る
- さらに、福山シティFCのビジョンやミッション、クレドを解説
※福山シティFCのビジョンやミッション、クレドはこちら - さらに、自分たちがどんなサッカーをするのか定めた「ゲームモデルフレーム」を掲げているのも福山シティFCの注目ポイント
- 「ゲームモデルの有無で、今後の戦略が変わってくる」と樋口さんは強調
<<福山市を盛り上げる活動>>
- つづけて、樋口さんは福山シティFCが行う、福山市を盛り上げる活動を紹介
- 福山市はバラが有名
- そこで、バラをもった選手の写真にキャッチコピーをつけたコラボ企画や、各選手の幼少期や少年期など、福山FCに集結するまでのストーリーを紹介する企画を展開
- 「バラをもちたくない選手もいるんでしょ?」という丹下の質問に、樋口さんは「いないです!もつのが当たり前」と回答し、一同に笑いが起こる
- ほかにも、ピッチにバラをもって入場したり、福山市出身の選手が「ばら王子」として活動
- 活動の写真を見ていた丹下が「さっきから、サッカーをしている写真がない!」と思わずひとこと
<<2021シーズンの戦績>>
- 2021シーズンの福山FCの戦績は19戦18勝1敗
- 所属は広島県リーグだが、トレーニングマッチや練習試合でJ1~J3のチームとも対戦
- 福山シティFCが敗れたのはJ1チームとの試合のみ
- その試合も、J1チームのスタメンと試合し、ロスタイムで1点を取られた惜敗
<<小谷野監督の存在>>
- 福山シティFCの小谷野監督は現在24歳
- Jリーグ最年少監督となる期待が寄せられている
- チームの代表である岡本さんも、小谷野監督の人間性と勝負強さ、試合時の適応力や対応力が素晴らしいと絶賛しているとのこと
- J1制覇を目標に掲げており、まずは2024年にJリーグ(J3)を目指している
<<SHIFTとの関係>>
- SHIFTは2020年から、福山シティFCをトップパートナーとして支援している
- SHIFTグループ全体でチームのDXにも取り組んでいる
- 福山シティFCのユニフォームには、胸に大きくSHIFTのロゴ
- 「白いユニフォームに、SHIFTのロゴが映えるよね!」と丹下
データをとることで、仮説の検証がしやすくなる
世界のスポーツ市場
- ここから、「スポーツ×DXの現状」と題した第2部がスタート
- まずは樋口さんから近年のスポーツ市場についての説明が
- スポーツ市場は年々拡大しており、2020年代以降は150兆円規模といわれている
- アメリカでは4大スポーツで合計4兆円もの売上高を記録
- 「Jリーグ制覇の先には、SHIFTとともに世界に出ていきたい!」と樋口さん
スポーツDXは大きく分けて3つ
- ウェアラブルデバイスなど、スポーツは多くの領域でデジタル化が進行中
- 樋口さんによると、クラブチーム運営におけるスポーツDXは3つに分けられる
- その3つとは、①強くする・勝つDX(選手、チームを強くするDX)②ファンエンゲージメント向上のDX(より魅力を高めるDX)③ファン集客・経済圏をつくるDX(データマーケティング)
<<選手、チームを強くするデータ活用>>
- まず福山シティFCはチームを強くし、組織をつくりあげることをめざしたDXに着手
- 「勝つDX」としてフィジカルデータの計測と映像分析を導入
- 福山シティFCの独自調査では、フィジカルデータの計測と映像分析ソフトはJ1、J2のほとんどのチームで導入していた
- 戦術を分析するツール、けがやコンディショニングを管理するツール、心拍数や走った距離を測定するツールを利用
- データを集めることはできるようになっているが、そのデータを分析して活かす人材が圧倒的に不足している
<<今後注目されるトピックス>>
- 樋口さんが「これは必ず来る!」とあげたのは「スタジアムDX」
- スタジアムの演出やチケット、販売などをどんどんDXしていくことでファンの満足度もあがっていく
- さらに、データを活用したビジネスでスタジアムの収益も向上可能
- つづいて、酸素レベルや疲労などまでリアルタイムで計測できるウェアラブルデバイスなど、最先端のスポーツDXを紹介
- 樋口さんは「どんどん進化していて、追いかけっこです!」と熱弁
- 監督やコーチが感覚として思っていた部分を数字で表せるようになるので、仮説の検証がしやすくなる
- ここで丹下がこの領域について「どこの国が1番進んでいるの?」と質問
- 樋口さん曰く、もっともこの分野が進んでいるのはオーストラリア
- オーストラリアにはGPSの会社が多い
- スペインやドイツのチームがデータ分析ツールをよく使っているとのこと
- さらに、AIを内蔵し、ボールを自動で追いかけるカメラも「これは今後普及する!」と樋口さんが断言
けがが大幅に減少し、トレーニングの課題も明らかに
GPSデバイスについて
- ここから、小谷野拓夢監督が、福山シティFCが進めるDXの実例を紹介
- まずは、選手のデータを収集するために使っているGPSデバイスについて
- 選手は、GPSデバイス装着した専用のインナーを着用する
- けがを防ぎ、適切な身体的負荷をかけることが導入の目的
<<導入による効果①けがの防止>>
- 2020シーズンは、選手の疲労の管理はACWR(主観的な疲労指数)だけを用いていた
- 選手に10段階で疲労度を申告してもらい、それにトレーニング時間を掛け合わせることで選手の疲労を管理
- あくまで主観的なデータのため、客観的なデータの活用ができていなかった
- 2021シーズンは、ACWRに加えてGPSデバイスによる「客観的」データで負荷を管理
- 特に着目したのは「走行距離」「スプリント」「乳酸参考値」の3つ
- 個人ごとにそれらの数値の増減を観察し、トレーニングの負荷をコントロールした
- 昨年と比較すると、大幅にけがの発生件数が減少
- 発生件数が0件の月も
- 客観的データを用いることでうまくけがの予防につなげられた
- 乳酸参考値が高かった選手は、翌日のトレーニングを軽くするなど、個人にフォーカスした対応が可能に
- 戦術を知ってほしいときなども休ませるのか、練習させるのかはむずかしいバランス
<<導入による効果②適切な身体負荷をかけること>>
- つづけて、逆に「ぎりぎりまで体を追い込んで、適切な負荷をかける」という視点でのデータ活用の実例を紹介
- ある日の試合中に計測した心拍数のレートに着目すると、心拍数が常に高い状態で動いていたことがわかった
- 心拍数が常に高い状態=とても疲れているということ
- しかし、ハードなトレーニングをしたはずの日に計測したデータを見てみると、心拍の状態を示すレートは低い数値に
- データをとることでチームの課題が見えた
- 事実をもとに自分たちの弱点を補う効果的なトレーニングの実施が可能に
- トレーニング中になるべく心拍数が下がらないよう、トレーニングの強度を高めたり、休憩の時間を減らしたりして身体的負荷を高めているとのこと
- 選手には、ミーティングで負荷の高いトレーニングを行う背景を説明している
- 「チームの課題などを説明するとき、見せられるデータがあるのは強い!」と小谷野監督
- 丹下は「データで見て、納得感のもとで練習しているのは健全!」と絶賛
- GPSデバイスでは「身体は休息を求めているのに、プレーで心拍数の高い要求をされたタイミング」や「選手がグラウンド内でどう動いたか」「選手間の位置関係」なども把握できる
- 「これはいろいろ考えられるね!」と丹下も感心
スポーツのDXにおける課題
- 「こうしたデータを有効に活用しているチームもあるが、自分たちはまだそこまでできていない」と小谷野監督
- さらに小谷野監督は「取れるデータを根拠に、より効果的なトレーニングをどんどんしていきたい」と熱弁
- 日本だけではなく、ヨーロッパも含めてデータサイエンティストの雇用はかなり課題に
- 「チームの勝てる可能性が高まるなら、投資するべき案件だね!」と丹下
- 「SHIFTでも、ぜひその分析をやってみたい!」と菅原
客観的なデータから、チームの強みを見出せる
映像共有プラットフォームについて
- さらに、福山シティFCが導入している映像共有ツールも紹介
- 試合の映像データの共有と、試合の客観的データを入手することを目的に導入
<<導入の効果①映像データの共有>>
- 共有する試合の映像には、スタッフからのフィードバックが矢印などの記号で書き込まれている
- そのため、選手は映像を見るだけでフィードバックを得ることが可能に
- 「昨年よりもトレーニングの効果やスタッフの思いを伝えやすくなった」と小谷野監督
- 試合の映像は「ポゼッション」「パス失敗」などがシーンごとにタグがつけられており、見たいシーンを選べる
- 映像の書き込み機能とタグづけ機能のおかげで、コーチングスタッフの人数が少なくても選手の指導ができるように
<<導入の効果②試合の客観的データの入手>>
- 「試合映像から得た客観的なデータをどういうふうに扱うか、ということにいま取り組んでいる」と小谷野監督
- いま蓄積している約18試合分のデータから分析すると、福山シティFCのボール支配率は60%以上
- 2021シーズンのJ1のボール支配率は、もっとも高いチームでも60%には満たない
- 「とことんボールをもつ」というチームの特色が明らかに
- J1のトップクラスにも通用するほどボールを保持することができる
- 支配率が高いのは、戦術をチームに徹底的に落とし込んでいるから
- さらに、1試合あたりのチーム平均パス本数は640本以上
- これもJ1のチームに負けない数値
- データを用いて明らかになった強みから、得点に結びつけていくことがこれからの課題
- 「めちゃくちゃおもしろい!」と丹下
<<ゲームプランへの活用>>
- 小谷野監督が、ツールを用いて得られたデータから得たさらなる気づきを語る
- 対戦相手とのスプリント回数に大きな差があることも明らかになった
- これは、守備強度に大きな違いがあるということ
- そのため、いつもより狭いピッチでのトレーニングをすることで対策し、守備強度に適応
- 結果、ボール保持の時間を増やし、相手の守備をかいくぐることに成功
- さらに、ゴールした位置とそれまでの過程を分析すると、ペナルティエリアの中央からの得点が圧倒的に多い
- パスを回しながら、そこでいかに得点をするかということに焦点を当てている
- 「もっともっと伸びしろがあるってことだね!」と丹下が福山シティFCへの期待感を語ったところで、対談は終了!