SHIFTのみなさん
ニュースリリースでもうご存知かと思いますが、SHIFTは、この3月に大きな転換点を迎えました。
というのも、三井物産、NTTインベストパートナーズ、DFJ JAICから、4億7千2百万円程の増資をいただいたからです。増資の理由は簡単で、成長性を期待されているから。
一般的に時価総額は、税引後利益の何倍かで評価されます。
今の日本の上場企業の平均は、8倍くらいです。これをPERと言います。
日本の平均PERと比較すると、SHIFTはとても高いです。
この増資をするに当たって、実は2年以上前から準備をしていました。
なぜ?って、それは、増資をするということは、僕が100%の株主じゃ無くなるからです。
「ふーん、それだけ?」って思いがちですが、僕がサラリーマン人生に終止符を打ち、
700万円というお金をつぎ込んで創った会社が、もう、僕だけのものでは無くなるんです。
そこには、大きなジレンマがありました。
年収も相当額貰い、新宿の52階という当時日本で一番高いオフィスで働き、あれほど輝いて働いていた前職の仕事を捨て、
結婚を1年後に控えた30歳の青年からすると、自分が夢憧れた「起業」は、人生でやらなくてはいけない最もプライオリティの高いことでした。
ただ、恐い。
本当にこの人生、そんなリスクを負って良いのだろうか。
持っている貯金を全て無くしてしまうし、買ったマンションの借金はあるし、
さらに極々平凡で幸せな家庭に育った彼女(今の奥さんです)と結婚もするし、
一生後悔する人生になるかもしれないと。
1年間、悩み続けました。誰にも相談せず。
ただ、僕の心の中の声が教えてくれました。
人生最期に目を閉じる瞬間に、
小学校のときに決めた夢をやらずに終わる人生を過ごすことほど、
後悔することなんてないんじゃないか。
そりゃそうだ。自分に素直に生きよう。そう思って、創った会社です。
それが、もう僕だけの物ではなくなる。
2年前は、大きな葛藤がありました。
でも、顧問の方からの助言で、考えがガラッと変わりました。
「丹下君、会社は1人でやるもんじゃない。色々な人の力を借りて、巻き込んでやっていくものだ。
自分さえ良いのであれば、個人商店をやれば良い。本当に社会に影響力を与える会社にするには、会社を公器にしないと。」と。
そりゃそうだ。
苦しい時代に一緒に頑張ってくれた創業メンバーに、少しでも、報いてあげたい。
そして、せっかく会社を創ったのだから、社会に貢献できる会社にしよう。
僕の自我なんか、もうどうでも良かった。
みんなの笑顔が見たい。
あのピカピカの前職から、名も無い会社に来てくれて、未熟な経営者だったのに、ずっとついて来てくれたメンバーの。
「丹下について来て良かった」と思ってもらえるように。
2年前のこの僕にとってのパラダイムシフトから、やっと大型増資が決まりました。
そうと決めたら、思考が変わり、一気に視界が開けました。
人間で一番邪魔しているのは、迷いです。
これが全ての悪の諸元。
僕は小学校6年のときに、社長になると決めました。決めたことは、やらないとダメです。気持ちの問題です。
そして、早速一冊の本を買いました。
「5億、50人の壁」
僕は自分で言うのも何ですが、営業が得意です。特に力を発揮するのが、経営者トップに対しての営業です。
今まで1人で売上をつくってきましたが、もう限界だと感じていました。
何故なら歴史がそう言っているから。
僕よりも多くの時間を掛けて賢人が経験してきたことは、ある程度時代が変わっても、普遍の事実があります。
組織で営業して、組織でデリバリーしないといけないのです。そうしないと、大きくは成長しない。
明白な事実。そして、これを理解してもらうために、当時のSHIFTメンバーには全員この本を配りましたね。
僕は突っ走るから、いちいち後ろは振り返れない。わからなければ、この本を読んでくれと。
増資する株価の交渉は、それはそれは大変なことでした。僕も、人生で始めての交渉です。
一時は、「増資止めようかな」とまで思いました。でも、社会の公器になって、
今まで苦労してきたメンバーに上場して恩返しすると決めたので、後戻りはできません。
会社を大きくするためには、巻き込む人を増やし、ステークホルダーの利益を調整し、みんなで儲けるようにしないとダメだと。
三井物産さんからは、社内稟議を通せないかもしれないと言われました。でも良いです、ここは男の勝負と。
もしこれでコケてたら、
すべてがおジャンです。
名も無いSHIFTがブランドを持つには、
三井物産、NTTというブランドがどうしても欲しかった。
そして、海外のファンドからの投資実績は、これからのSHIFTの成長にとっては 、外せない。
だから、僕はこれからの日本を代表する会社として、三井物産、NTT、そして、世界的なファンドのDFJの3社が必要だと訴えました。
結果、投資が決まりました。
そして、増資が決まった瞬間から、
すごい勢いで色々なことが上手く行くようになりました。
そう、あの自分の殻を破ったことで、巻き込む人が増えたことで、一気に加速し始めたんです。
そして、今日、新たにSHIFTの成長を牽引するであろう
インド拠点の社長に会いに来ています。
既に雇っておきながら、直接会うのは初めてです(笑)。でも僕には人種を超えて、通じるものが感じられたのです。
いつも、迷う時には論理的思考じゃなく、心の声に聞きます。
あいつは良い奴か?
……信じるしかないです。創業メンバーが僕を信じてくれたように。
これから、海外へ進出するという、SHIIFTの第二幕が始まります。
この壮大な旅をもっと楽しもうぜ!!
インドのプネより、愛を込めて。
2012.03.07 Masaru Tange(丹下 大)
※「大の視点」とは、SHIFTの代表取締役社長である丹下 大が
当時SHIFTメンバーに向けて送ったメールを一部社外公開向けに再編集したものです