2021年11月10日、「ビジネスを『賢人』から学ぼう」をキャッチコピーに、オンラインで開催された「SHIFTゼミナール」。そのなかで、株式会社プレイドの代表取締役 CEO倉橋健太氏をお招きし、丹下と「密談」を行いました。CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE』でさまざまな企業のCXをアップデートしてきた倉橋氏は、何を語ったのか。そのポイントをまとめていますので、ぜひご覧ください。
どんな「密談」が行われたのか。まとめはこちら!
丹下から最初の質問:最初にインターネット関連企業に就職したのはなぜか?
- 「若手ホープの素晴らしい経営者」と丹下が紹介し、密談スタート
- 丹下と倉橋氏は2018年ごろ、投資信託会社の紹介で情報交換の場で対面したことが最初の出会い
- 「起業の経緯を根掘り葉掘り聞いていきたい」と丹下
- 倉橋氏はインターネット関連企業に新卒入社
- その企業の無双状態がはじまったタイミング
- そこで、丹下が入社理由を質問
- 倉橋氏の回答は「人が輝いていたから」
- 起業したかったので、サービスや事業をつくっているフェーズの会社に入りたいという想いも
- 現在名だたるIT企業の創業者もその企業の出身者だが、あまり関わりはなかったと明かす
- 「いい意味で世代が違いますね」と丹下
<<前職での担当業務について>>
- 前職には約6年間勤務
- インターネットショッピングモール事業の部署で、PC版サイトのWebディレクションやデータ活用のマーケティングを担当していた
- いまの仕事にかなり近い
- ポイントの活用や、会員のランクごとのマーケティングなど、ユーザーのロイヤリティを上げるための施策の企画、Webサイト上での展開を一気通貫で行っていた
- ほかにも、商品のカテゴリーベースの特集やキャンペーンをつくり、エンゲージメントをあげるための施策を進行
- 「母の日、父の日、年末年始のおせちなどシーズナルの企画がけっこうあった」と倉橋氏
- 入社して2、3年ほどは案件を直接担当
- 前職はギネス文化で、「日商が一番立つ日をいかに仕掛けてつくっていくか」というモチベーションがとても高い雰囲気
- お客様を巻き込んで、サイトの流通の底をぐっとあげるイベントをつくっていた
- 日商のギネスを打ち立てたことも何度かあった
- 「毎日がお祭りでとにかく忙しかった」と振り返る倉橋氏
- 起業するために入社したのに、5年ほどその想いを忘れてしまうほどの忙しい毎日
- 起業するまではビジネスモデルを考えていたわけではなく、仲間集めなどもしていなかった
- 入社5年目に「1年後くらいに辞めよう」と思い、準備をスタート
- そのころもビジネスモデルは全然考えていなかった
とりあえず飛びこんで、失敗しながらやってきた
丹下からの質問:社名「プレイド」に込めた思いは?
- 創業以来、社名はずっと「プレイド」
- 社名の由来はPLAY(楽しむ)+AID(ケアする)
- 「楽しむことを支援する事業をやりたいと思った」と倉橋氏
- 社名は会社の性格を表したもの
- 起業は人生のモードチェンジのため、「どう生きていきたいのか」「どんなときが楽しいのか」を素直に表現した
- 「それって重要ですよね」と丹下
- 同時期に準備をしていた会社はあったが、当時、交流はなかった
- 「とりあえず飛びこんでやってみて、失敗しながらやってきた」と倉橋氏
- 前職はとにかく伸びている会社で、外との交流が盛んな環境ではなかった
- スタートアップや起業に対して解像度は高くなく、わからないけどやりたいからやる状態
- 倉橋氏は「1年目は『こんな起業家向けのイベントがあるんだ!こんな会社があるんだ!』と全部発見だった」と振り返る
丹下からの質問:プレイド創業時、仲間はいた?
- 創業メンバーは倉橋氏含めて4名
- 社外役員だったメンバーはいま専属の取締役になっているが、他の2人は1年目でリセット
- 創業1年目は飲食店の予約などができる飲食系のアプリをつくっていた
- 「その裏でECサイトのコンサルティングなども行っていた」と倉橋氏
- 当時、スマートフォンなどの普及により、人の頭のなかにある情報やコンテンツにアクセスしやすくなると感じており、そのカテゴリーにおもしろさを感じていた
- しかし飲食系のアプリは撤退することに
- 倉橋氏は当時のことを「人それぞれでプライオリティがずれていると、チームもプロダクトもいいものができない」と振り返る
- プロダクトは出してからが勝負
- 出すことを目的にして、とにかくリリースしてからプライオリティがバラバラになると、チームとしての機能が落ちる
- 「1番大事なことを踏み外している可能性が高い」と感じ、一回止めることに
- 次の準備も進んでいたが、すべて止めてチームもリセットし、離れるメンバーの株も買い戻した
- 合理的に会社を清算することも考えたが、いいも悪いも経験と捉えた
- 「この会社として成果を生みたい」という想いやプライドが強く、いまある箱をうまく生かして進むことに
半年間のディスカッションから再スタート
丹下からの質問:現CPO柴山直樹氏との出会いは大きかった?
- 倉橋氏は、紹介されてすぐに打ち解けたという柴山氏との出会いについて、「運命感は、けっこうありました」と振り返る
- 倉橋氏はこのころ、何人ものエンジニアと会っていたが、柴山氏とは相性がよく、共通点もあり、波長もすごく合った
- はじめて会ったときは柴山氏と何をするかは決めていなかったが、半年後に柴山氏が意思決定しプレイドにジョイン
- 「その時にベストだと思える出会いがあったので、すべてを懸けるべきだと思った」と倉橋氏
- 柴山氏はもともとスタートアップに興味があり、出会ったときにお互いの経験を棚卸ししながら対話
- 「シンプルにいうと、柴山さんが研究していることのひとつのビジネス表現が、これまで僕が積んできた経験だった」と倉橋氏
- 柴山氏との対話のなかで、倉橋氏は当時使っていた解析系のプロダクトの裏側と、研究領域にはそれよりさらに進化したものがあると知る
- 「技術の未来とビジネスの未来を重ねて考えた方がいいのでは」といったディスカッションを行っていた
<<柴山氏とのディスカッションでの気づき>>
- 当時はまだ、データをしっかりと事業に活用できている企業がほとんどなく、Webサイトでユーザーの属性やパーソナライズもできていなかった
- 前職でずっとやっていたことが、世の中の実態と大きくギャップがあることを知る
- さらに、研究領域にある技術をうまく組み合わせていくと、もっと高度なことが、もっと簡単に実装できることが明らかに
- 「すごく苦労してやってたのに!」と倉橋氏
丹下からの質問:前職でもデータをもとにユーザーに向けた施策を打つのは大変だった?
- 倉橋氏は「ユーザー属性に合わせた施策を打つ際に大きくやることは2つ」と解説
- 1つは、仮説を立て、クエリをかけ、データベースからメールアドレスなどのリストを抽出する、分析とリスト生成のプロセス
- もう1つは、コンテンツを制作し、リストに送ること
- リスト抽出の際、わざわざクエリを書かなくても、プルダウンでクロスをかけていけるようなDB設計になっていれば、リテラシーがなくてもリストはすぐに生成できる
- クリエイティブを制作するときも、1からHTMLを書かずにWYSWYG(最終的な仕上がりを画面上に表示し、確認しながら編集できる技術)でつくることができる
- 「リテラシーはそもそもそんなにいらないし、できることの制限もない」と倉橋氏
- 「なるほど~!」と丹下
- DBに、使われ方を想定したデータ蓄積がなされていないことにより、データを取り出す際にすごく時間がかかったり、ひと手間が必要になる
- 前職でも、こうしたプロセスはかなり重かった
- 倉橋氏は企画プランを考えて全体設計をし、クオリティチェックなどをするポジションで、リストをつくる人やコンテンツをつくる人と施策を進行
- メールの配信ツールもプロデュースしていかなければいけなかった
- 柴山氏とのディスカッションにより、そうしたプロセスが全部ワンストップでできることに気づく
- 技術にふれることで、構造に目が向くように
丹下からの質問:『KARTE』は構想が生まれてすぐにつくることになった?
- 「最初の半年ほどはただただディスカッションをしていた」と倉橋氏
- いまの『KARTE』のコンセプトにいくまでに、いろいろと試行錯誤
- 世の中の新しいテクノロジーやアイデアを知り、それらがどんな方向に向かっているのかをディスカッションで確かめていった
- 「やっぱり、その半年間、考えたからよかったんでしょうね」と丹下
- 倉橋氏にとって、とても重要な半年間だった
- いまの事業戦略や、やっていることはその期間の柴山氏とのやりとりからほぼずれていない
- 倉橋氏は「最初が大事だった」と強調
いろいろな人に助けられながら、全部勉強していった
丹下からの質問:創業した2011年から2015年に『KARTE』をリリースするまでの期間は何があった?
- 2012年の8月に柴山氏と出会い、2013年の4月に正式に2人でスタート
- 正式スタートから2年後に『KARTE』ローンチ
- 出会ってから半年間一緒にディスカッションし、次の1年間でα版をつくり、いろいろなところに当ててみながら調整していった
- 自信がついてきたころにファーストラウンドで投資を受け、翌春にローンチ
丹下からの質問:しっかり着実に歩んでいるのは、性格によるものなのか?
- 倉橋氏の着実なアプローチについて、丹下が質問
- 倉橋氏の回答は「性格もあるし、1年目のウォーミングアップがしっかり効いている」
- VCからの資金調達などについてはイベントに出ながら情報収集
- 「ちょっとずつ情報のリソースが広がっていった」と倉橋氏
- 資本政策のメンターはいなかったため、その分野に詳しい従業員などから知識を吸収
- さらに、いろいろなビジネスに携わってきた方に教わりながら資本政策を立てていった
- 「そういうの重要ですよね」と丹下
- 「いろんな人に助けられながら、全部勉強してきている」と倉橋氏
お客様にお待ちいただきながら『KARTE』をローンチ
丹下からの質問:2014年、Infinity Venture Summit Launch Padは登竜門として参加したのか?
- 2014年、プレイドはInfinity Venture Summit Launch Padに出場し、Awardを獲得
- 倉橋氏は「IVSで上位入賞すると、そのあとが広がるらしい」という話を聞き、出てみたいと思っていた
- いざ参加してみると、すでにリリースして初期のトラクションがついている人たちがほとんどだったが、『KARTE』はまだローンチ前
- β版しかない状態で参加し、「無理して出た部分があった」と倉橋氏
- 事前のプレゼンテーションでも厳しい指導を受けた
丹下からの質問:Award獲得後は快進撃だった?
- 倉橋氏はこの質問に「そうですね」と回答
- 2014年の資金調達時、プレイドはプロダクト提供ができる状態ではなかった
- そのときのコンセプトは「ECのWeb接客のクラウドソフトウェア」
- しかし、資金調達のニュースが出たときに、EC以外のカテゴリーの、経営層のお客様からたくさん連絡が
- その連絡を受け、「ECだけの課題じゃない」と確信
- いろんなお客様にお待ちいただきながらローンチした背景がある
- 「それはすごいですよ!」と丹下
- 「ニーズは確認できていて、僕らがそこにどういうアウトプットを出すか」という話のなかで、しっかりプロダクトをつくっていくことをつづけた
- コンバージョンや売上に貢献できるし、コンセプトにも共感しているお客様が一気にきてくれた
- そこから2017年ごろまでそのラウンドのファイナンスで走り、ある程度成長したタイミングで次のラウンドに
- 2018年4月に7社から総額27億円の資金調達を実施
- 「この時期で27億円の調達は大ニュース!」と丹下
丹下からの質問:『KARTE』の高い技術力の裏側は?
- 『KARTE』はサービス開始から5年で100億ユーザーを解析
- 秒間10.5万イベントのトラフィックに対応、そのデータを1秒以内にリアルタイムで解析できる
- 「結構な技術力がないとできない」と、丹下がその裏側を質問
- 2013~14年に『KARTE』のコアのエンジンをつくっていくとき、柴山氏とすごくディスカッションした
- たとえば「リアルタイム解析は必要なのか」という議論
- 当時は汎用技術がなく、膨大なデータの処理は速いものでも数分かかっていた
- しかし、ウェブサイトから出るまでは1分に満たない世界なので、リアルタイムしかない
- 「全部フルスクラッチです!」と倉橋氏
丹下からの質問:当時、技術者はどのように採用していた?
- 2015年3月は社員20名強だったが、全員リファラル採用
- 柴山氏の研究室関連のメンバーや、倉橋氏のビジネス系の知り合いなどを採用し、仲間を集めた
- 柴山氏のバックボーンが『KARTE』にとても合致
- 膨大なデータに可能性を感じていた
- 「研究開発的なノリでこれをつくっている」と倉橋氏
- 2014年のファイナンスは1.5億円、その1年後に5億円を調達
- 丹下は「スタートアップの立ち上げとしては美しい」と感嘆
- 倉橋氏は「最初にすごくしゃがんで跳ぶ準備をしたからこそ、ぶれずにやってこれた」と振り返る
- 創業1年目での事業撤退について、「意気揚々とはじめていきなりつまずくのは、けっこうショック」と倉橋氏
- 最初の成果が出るまで、自分たち自身を自分たちが認められなかった
- 最初のファイナンスまでは精神的につらかった
データをうまく使えないと、エンドユーザーに選ばれない時代
丹下からの質問:サービスの値つけはどう決定した?
- 「MAU(月間アクティブユーザー数)のボリュームをベースにプライステーブルを組んでいる」と倉橋氏
- どのくらいのボリュームのお客様の体験をパーソナルにしたいのか、というところでプライシング
- お客様が1万~10万人だと月額20~30万円
- 「それは払う!」と丹下
- 20~30万円でも、お客様がリカーリングのサービスを使ってくれることは会社にとって大きい
- ローンチから1年ほど、10万円で使い放題のパターン、フリーミアムで使えるパターンや成果が出たところからマージンもらうパターンなど、いくつか試してみた
- そのなかで、もっともプロダクトをヘビーに使ってもらえる10万円のパターンに絞り、そのプライスのレンジを引き上げてきている
- 「1番賢いやり方!」と丹下
- 『KARTE』の売上をお客様の会社単位でみたとき、1社あたりの売上は年間1,000万円強が平均
- 年間1億円以上の売上のお客様も
- 丹下は「マーケットはこれから広がっていくし、お客様が成功しているから使ってくれるグッドサイクルに入っている」と絶賛
- 「データをうまく使えていないと、エンドユーザーに選ばれない時代になってきている」と倉橋氏
- マーケティング側面でも、カスタマーデータの有効性は注目されてきている
- マーケティング以外のカスタマーサポートやカスタマーアクイジション、OMO(オンラインとオフラインの融合)においても中心にくるのはカスタマーデータ
- その中心点をマーケティングアプリケーションである『KARTE』でつくりにいって、そこからホリゾンタルに展開していくことを考えている
攻めのスタンスを貫いていく
丹下からの質問:堅調な右肩上がりの成長は狙いどおり?
- 「数字で見ると美しいくらいに右肩上がり」と丹下
- 売上高成長率、ARR、契約件数、契約単価もすべて堅調に成長
- 倉橋氏は、「『こうしたかった』という気持ちはあるが、すごくチャーンが増えたり、単価がなかなかあがらないタイミングがある」と明かす
- このプロセスで大切にしているのは、「無理に売りにいかないこと」
- 自分たちの方向性と異なるお客様が増えるとコントロールできなくなるため、まずは自分たちのあり方を固めることを優先
丹下からの質問:近年の1.3倍の成長は、お客様と成長できる「心地よい成長」なのか?
- プレイドの過去3年間の業績を見ながら丹下が質問
- 「ここが健全なライン」と倉橋氏
- 今後はM&Aでジョインした会社がもついろいろなアプリケーションを乗せていき、アップサイドがあるはず
- 密談前日の決算発表を受け、この日のプレイドの株価はストップ高に
- 「広い戦略をちゃんと見ていただけたのかな」と倉橋氏
- プレイドは上場してからまだ1年で、「攻めないとダメだな」と思っている
- 攻めるときほど学びが多く、そのスタンスは貫いていく
- それが、投資家のみなさんやお客様に応援してもらえる形に
- 「安心しちゃいけないけど、伸びつづけるでしょうね」と丹下
丹下からの質問:『STUDIO ZERO』への想いは?
- 2021年7月、プレイドは「データであらゆる産業を振興する」をミッションとした事業開発組織『STUDIO ZERO』を創設
- そこにかけた想いを丹下が質問
- プレイドは、企業がカスタマーデータをしっかり有効活用することをソフトウェアで支えることに長けており、それが事業
- しかし、企業や産業にとってカスタマーデータや『KARTE』だけがすべてではない
- これまでは、『KARTE』一本できたので、それ以外で価値提供をしていない
- しかし、『STUDIO ZERO』があることで、ほかの活動をくっつけてもっともっと大きなことができる
- いろいろなところのアライアンスや、プロダクト以外での貢献をもちこんで、産業自体が目指す方向をいっしょに企業とつくっていきたい
- さらに、2021年8月に三井物産と新会社「.me」を設立
- ずべてデータを中心に事業設計したD2Cのネクストモデル
- 「素晴らしいです!」と丹下
丹下からの最後の質問:視聴者へメッセージを!
- プレイドは「いろいろな方から応援されており、その結果で成長できている会社」と倉橋氏
- 自分たちの都合ではなく社会にとっての価値を見据えていく
- 「ぜひ応援なのか、いっしょに協業できれば!」と倉橋氏がメッセージを送り、密談は終了!