2021年4月14日、「ビジネスを『賢人』から学ぼう」をキャッチコピーに、オンラインで開催された「SHIFTゼミナール」。そのなかで、メドピア株式会社 代表取締役社長 CEOの石見陽さんをお招きし、丹下と「密談」を行いました。医師・医学博士でもある石見さんは何を語ったのか。そのポイントをまとめていますので、ぜひご覧ください。
どんな「密談」が行われたのか。 まとめはこちら!
丹下からの質問:改めて石見さんの経歴は?
- 丹下と石見さんが知り合って7年
- メドピアが上場した2014年に知り合った
- そして、丹下が紹介を兼ねて、改めて石見さんの経歴を聞くことから密談スタート
- 石見さんは医師
- かつては大学病院に勤務
- 循環器内科で患者さんをみていた
- 石見さんのお母さんの家系に医師が多く、おじいさんもお兄さんも医師
- 医師として働いているときは「起業なんてまったく思っていなかった」と石見さん
- 当時は、よく働き、お酒もよく飲んでいた
丹下からの質問:なぜ、メドピアを立ち上げたのか?
- 「当時は、医師として充実していたはず」と丹下
- それにもかかわらず、メドピアを立ち上げた理由を石見さんに質問
- 臨床医として4年たった2004年当時を石見さんは回顧
- 2004年は医療ミスが頻発し、医療訴訟も非常に多かった
- 一生懸命働いているものの、医師に対しての風当たりは強いものに
- 「10年、20年と、このまま医師としてだけで医療に携わっていくのが最善なのか、疑問に思ったのです」と石見さん
<<起業へと舵を切るキッカケ>>
- 当時、医師が逮捕される象徴的な事件も起きた
- 石見さんは医師として誇りはもっているものの、リスクが高いことを実感
- この先、どれだけ患者さんの治療ができるか逆算をした
- そして、算出した人数は20万人
- 多い数ではあるが、「違うアプローチをすることで、もっとサポートができるのではと思ったんです」と石見さん
- いくつかある選択肢のなかにあったのが起業
- 世の中にインパクトを残すためにはどうしたらいいか考えたという石見さん
- 当時、医師として理念を大切にし、民間からチャレンジしている人がいなかった
- そこで2004年にメドピアを創業へ
<<創業当初のメドピア>>
- 「創業してから2007年まではサイドビジネスだった」と石見さん
- メドピアは「とりあえずやってみよう」でスタート
- 1円で株式会社が起業できる時代背景もあった
- 医師の人材紹介会社に一括登録できるサービスが、最初のサービス
- 転職希望の医師を集客し、人材紹介会社に送客して手数料をもらうビジネスモデルだった
丹下からの質問:創業当初、苦労したことは?
- 医師だった石見さんは、BtoBの経験は当然なく「ビジネスマナーにも問題があった」と回答
- 人材紹介会社に営業へ行っても「会社概要」が必要であることも知らなかったほど
- そのような段階からBtoBのビジネスをはじめたため「けっこう大変でした」と石見さん
- 義理の弟さんを含めた3名で創業していたこともあり、ビジネスマナーも教えてもらいながらやった
<<ビジネスの面白さを発見>>
- 当時、一番いいときで月の売上が200万円
- 徐々に石見さんは「ビジネスって面白いな」と思うように
- ビジネスは価値を提供しなければお金をもらえない
- ミスをすれば当然クレームがくる
- ビジネスはフェアな世界
- 「そのような世界に興味がわくようになりましたね」と石見さん
- 目の前の患者さんを治すのも大切
- しかし、民間からのアプローチで、自分が得たスモールサクセスを社会に還元することができる
- そこで、2006年、本気で医師×ITで勝負を決意
- 石見さん曰く「2006年が第2創業」
医師をしっかり支援するその先に患者さんが救われる
丹下からの質問:第2創業のときのビジネスモデルは?
- 第2創業時、「なぜビジネスをやるのか考えることが重要だと気づいた」という石見さん
- なぜこの法人をやるのか、改めて考え直すことに
- そして、メドピアのミッションを「Supporting Doctors,Helping Patients.」に決定
- 「医師をしっかり支援するその先に患者さんが救われる」と石見さんがミッションを説明
- さらに、どうしたら「Supporting Doctors」につながるか考え…
- 当時SNSだったmixiの医師限定版があれば、たくさんの医師をサポートできることを思いついた
- 実際、mixiに医師限定のコミュニティは存在
- しかし当時、コミュニティに参加する際、医師免許を確認していなかったため、一般の人も参加するようになり、結果的に医療相談部屋になっていた
<<第2創業時のビジネス>>
- 医師限定のコミュニティは、もともとニーズがある
- 石見さん自身もそのようなコミュニティがあったら参加をしていた
- そこで「Supporting Doctors」の具現化として、医師限定のコミュニティを開始
- しかし、「何をもって儲けるかがなかったので、苦労をしました」と笑いながら振り返える石見さん
- コミュニティの人数を増やすために相互紹介機能を用意したが、思うように人数が伸びず
- 当時、ビジネスモデルがないなか、会員獲得のため、学会にブースを設営
- そのブースでサービスの紹介を熱く行った
- 「会員7,000人ぐらいまでは、自分の足で稼ぎました」と石見さんは回顧
- 2008年ぐらいまでは、月の半分、学会が行われる地方に出張をしてサービスを紹介していた
丹下からの質問:当時の資金はどうしたのか?
- 第2創業時の苦労話を石見さんから聞き、当時の資金について丹下が質問
- 石見さんは、メドピアの事業を共同事業としてやってくれる会社があったと説明
- ライセンス供与のような契約
- 「この会社がなかったら立ち上がってなかった」と石見さんは感謝
丹下からの質問:支援してくれた人との出会いは?
- 支援してくれた会社に足りなかった領域をメドピアが補うことができた
- 両社が共同で事業を行うことでシナジーは大きく、将来のビジョンについても一致
- そのような理由から、支援してくれた会社の社長と意気投合
- そして、その社長から創業者を紹介してもらった
<<想いが大切>>
- 石見さんは「医師をしっかり支援するその先に患者さんが救われる」ことを疑わない
- この想いに創業者が共感してくれ、助けてくれた
- 「先に応援をするから、のちに自分も、そして社会にも貢献してほしい」という考えのもと、支援してくれたとのこと
- 「経営者としても鍛えてもらった」と石見さん
対象市場において潜在利用者の1割が会員として集まると、何かが起きはじめる
丹下からの質問:メドピアの大きな変化はいつだったのか?
- 「メドピアは、いろいろなタイミングで大きな提携をしてきた」と石見さんが紹介
- なかでも日経BPとの提携は大きかった
- 日経BPはもともと医師向けのコミュニティサイトを保有しており、その会員数は2万人
- 日経BPは会員を活用してビジネスにしたいと思っていた
- そこでメドピアと共同事業というかたちで提携
- この提携で、日本の医師の1割が会員に
- ここから製薬企業が相手にしてくれるようになった
- プラットフォームビジネスは、潜在利用者の1割が会員となることで、ようやくビジネスとして成り立つと考えている
- その市場全体の1割が会員になると、何かが起きはじめる
丹下からの質問:会員数が増えて、どんなビジネスをしたのか?
- 「シンプルに広告だった」と石見さんは回答
- そして、2010年から展開したサービスを紹介
- そのサービスとは、薬を医師の目線で評価するもの
- コンテンツとしても面白いと思っていた
- 医療業界で、非常に有力なビジネスパートナーは製薬企業
- 医師のトラフィックが生まれれば、製薬企業向けのビジネスができると確信
- サイトに広告枠を設置して、製薬会社が出稿する広告に対して、広告料を得るようにした
丹下からの質問:医師に薬の評価を書いてもらうのに費用は発生しなかったのか?
- 医師にはシェアの文化がある
- 自分が知っていることを教えてあげたい
- 情報を共有することに抵抗がないカルチャーがある
- そして、石見さんは「メドピアにはポイントがあるんです」と説明
- お金を稼ぐというよりは、ポイントを貯めるゲーム感覚でみんな書いてくれた
- そこも医師が薬の評価を書いてくれた理由
- このビジネスがうまくいき、2014年の上場までいった
先輩経営者にくらいつくことを大切にした
丹下からの質問:上場後、どこまで成長したのか?
- ひとつのサービスで上場までいったが「一本足打法だった」と石見さん
- 「ほぼ、つま先打法」と石見さんは苦笑
- そのとき、新規事業に挑む重要さを知った
- 現状の売上をつくりながら新規事業を考えるのはむずかしい
- 上場までは、広告枠だけを売っていた
- しかし、上場後数ヶ月して製薬業界が全体的に広告を控えるできごとが…
- 当時のメドピアは、9割以上が製薬業界からの売上
- いっきに苦しい状況に
- 「一番、きつかった」と石見さん
- この「上場後2015年、2016年は、実は2つ目に苦しかった時期」と石見さんは告白
- そして、1つ目の苦しかった思い出に。それは上場前の2010年
- 経営陣で問題が発生
- 当時は、先輩経営者にもアドバイスをもらい、助けられた
- 経営していると外部環境の変化がある
- 内部環境だけは自分が影響を及ぼすことが可能
- 経営幹部の体制構築などについて丹下にも石見さんは相談したことがある
- 組織を広げていくにはリーダークラスが大事
丹下からの質問:なぜ、石見さんは先輩経営者から可愛がられてきたのか?
- 石見さんはこれまで先輩経営者などに支援やアドバイスをしてもらってきた
- そんな石見さんに丹下が上記の質問
- 石見さんが語ったのは先輩経営者に「くらいつくこと」
- 当時、先輩経営者に対して石見さんが提供できることはなかった
- しかし、先輩経営者が時間をとってくれたなら「お土産になるようなものを何かもっていきたかった」と石見さん
- そして、成長する姿も見せたかった
- いまもなお、くらいついていく意識はしている
- もともと医師だったため、経営の先輩はまわりにいない
- そこは苦労したので、先輩経営者にくらいつくことを大切にした
ノウハウをもった人がジョインしたことで戦える集団に
丹下からの質問:実際に、新規事業を生み出したのはいつからか?
- 上場後、新しいことを生み出そうとしたが形にならなかった
- 「ここ3、4年、新規事業をつくるスピードが上がりました」と石見さんは回答
- 技術的にもノウハウとしても上がってきた
- 約5年前、経営体制を大きく変えたことがきっかけ
- それ以前は、まだまだ戦える集団になりきれていなかった
- いろいろなチャレンジを繰り返し、戦える集団に変化
- 失敗はあるが打席に立つ回数が増え、いま事業の3本柱ができた
丹下からの質問:新規事業が立ち上がる前、時価総額が下がったことがあったのでは?
- 「上場来、時価総額の高値が220億円だったのですが、40億円まで下がりました」と石見さんは返答
- さらに「当時、株主総会では多くの株主様から厳しいお声をいただいた」と石見さん
- 話すことはずっと変わらないが、業績がついてきていないというのが事実
- 上場企業として株主に損をさせているということが辛かった
- 上場来高値を更新したのは、ここ数年
- いまの時価総額は1,400億円ほどに
- 「すごいですね」と丹下は驚愕
丹下からの質問:ビジネススキルが高いCOOと医師である石見さんが組んだことで、うまくいったのか?
- 「そういう感じだと思います」と石見さんが肯定
- そして、独特であるというヘルステック業界の話題へ
- 世の中には、ビジネスからスタートする産業、テクノロジーからスタートする産業がある
- 実は、もうひと軸ある。それが、ミッション
- ヘルステックはミッションからスタートする産業
- ヘルステックは命にかかわる
- 「(健康に)いいであろう」と、みんながコンセンサスをもつようなミッションをもとにビジネスに参入する人が多い
- ビジネスドリブンがCOO、テクノロジードリブンがCTO、ミッションドリブンがCEOで、それぞれの領域を牽引する
- ヘルステック業界は、ミッションをよく知っていて、想いのある人の存在が、ほかの業界よりも強くないといけない
- その領域で間違うと、業界からキックアウトされてしまう
- 石見さんは、ほかのIT経営者よりも青臭くても「人の命」に関するミッションを大切にしている
- ビジネスとしても、しっかりとしたミッションをもっていないといけない
数年先には面白いことになる
丹下からの質問:改めて、現在のビジネスモデルは?
- 丹下が改めてメドピアの現状を質問
- 「3つ柱ができています」と石見さんが現在のビジネスモデルについて説明
<<1つ目の柱>>
- 1つ目の柱が「集合知プラットフォーム」
- それが医師のコミュニティ
- メドピアが存在するアイデンティティであり、同時に収益の柱
- 集合知とは口コミの世界
- それを集めてくるプラットフォーム
- 医師版と薬剤師版が存在
- いま、医療系の専門家集団のプラットフォームをいろいろつくろうとしている
<<2つ目の柱>>
- 2つ目は「予防医療プラットフォーム」
- 世界を見ても、この領域でビジネスをできているところは少ない
- メドピアでは手ごたえをすでにつかんでいる
- その1つが企業の健康経営の支援
- 少しHRテックに近いが、従業員の健康管理を中心とした、予防医療のプラットフォームに手ごたえを得ている
- 予防医療のプラットフォーム内では歩数計のアプリもリリース
- さらに、食事の写真を撮ると、AIで解析して摂取カロリーや栄養素が自動で計算される食事記録アプリも展開中
- BtoCで面白く、一般の人にも認知されやすいサービスもスタートしている
- 「数年先には面白いことになるのでは」と石見さん
<<3つ目の柱>>
- 3つ目の柱として石見さんがあげたのは「プライマリケアプラットフォーム」
- それはクリニック・薬局などの医療機関と患者さんを繋ぐサービス
- 医療は必ず地域に分散してあり、地域で患者さんの健康を守っている
- 重要な役割を果たすのが、病院はもちろん、開業医、薬局
- その人たちは小規模分散型で、DXが進んでいない
- そこで、OEMの形でアプリを提供中
- 患者さんとクリニック、患者さんと薬局がアプリを通して繋がるようにしている
丹下からの質問:3つの事業の規模は同じぐらいなのか?
- 石見さんの回答は「『集合知プラットフォーム』が売上の6~7割を占めている」
- 「予防医療プラットフォーム」が売上の3割弱
- 「プライマリケアプラットフォーム」は立ち上がったばかり
- 事業を開始して2、3年ぐらいだが「プライマリケアプラットフォーム」は感触がいい
フロントにいると、ニーズがいろいろ聞ける
丹下からの質問:新規事業はどのような体制で立ち上げているのか?
- 「2018年、スギ薬局と提携をしました」と切り出す石見さん
- 提携するにあたってお互いの資産をもち出し、5、6個のプロジェクトを始動
- さきほど紹介した歩数計アプリや食事記録アプリもその一つ
- メドピアが着想したものもあれば、提携先が着想して新規事業になったりすることもある
丹下からの質問:新規事業の企画や立ち上げは、どんなメンバーが行っているのか?
- 中途や新卒、医師など、新規事業のメンバーが気になり、丹下は上記の質問
- 「医師は1人だけいます」と石見さんは紹介
- オンライン診療系のサービスは、その人が立ち上げを行った
- 現在、新卒採用は行っていないが、数年以内には採用を予定
- 基本的には中途入社のメンバーが新規事業を立ち上げている
<<新規事業の立ち上げスキーム>>
- まず、セールスでフロントに立つ人を決め、クライアントをもってもらう
- 新規の獲得などセールスも担当
- フロントにいると、ニーズがいろいろ聞ける
- そのなかで企画を立ち上げ、社内で検討をしたり、医師にアンケートを実施
- 企画がいけそうであると感じたら、モックを立ち上げ、5人程度のプロジェクにする
- セールス担当者を新たにアサインし、事業責任者に専任
- 「人の流動性は保つようにしている」と石見さんがそのポイントも紹介
この業界は、やれることが溢れている
丹下からの質問:ほかのSaaSビジネスを行っている企業と比べ、なぜメドピアは株価が高いのか?
- 「競合の存在は大きいと思います」と、医療従事者向け情報サイトを運営する大手企業をあげる石見さん
- 「集合知プラットフォーム」はまさにその企業が競合
- 業界全体が伸びていることが、株価を上げている要因
- 「その企業と比べてもらうことは、ありがたい」と石見さん
- ただし、競合企業を真似るつもりはない
- 業界のすそ野はまだまだ広がる
- 現在、競合とサービスは被ることが多い
- 競合との比較での株価や期待値になっている
- さらに進んでいくと、3つの事業以外にもやれることがあるはず
- 病院内にWi-Fiが入っていなかったり、メールアドレスがひとつしかないところもある
- 「やれることが溢れている!」と石見さんはニッコリ
丹下からの質問:今後の展開には、そこまで資金が必要ないのか?
- メドピアは、優秀な人を雇い、ゲリラ的にマーケティングを実施して、うまくいけば進んでいくスタイル
- そういうスタイルのため「突然、大きな資金調達が必要なわけではないのでは」と丹下
- 石見さんが語ったのは「現状は、そうですね」
- テレビCMをしても大きく変わらない業界のため、マーケティングにお金がかからない
- ただし、アプリのサービスやライフタイムバリューを見ていてペイする必要があれば資金調達をする
- つねに合理的な判断をしたい
- 資金調達を「やらないと決めているわけではない」と石見さん
- 資金使途としてあるならばM&A
- 優良なクライアントをもっている企業
- 医師の会員がいるけど活かしきれていない企業などが、M&Aをする企業としてありえる
- これまでの石見さんの話を聞き、「石見さんは強い信念がある」と丹下
- それを聞き「やめないことが自分の才能かもしれない」と石見さんは返答
- 「前に進もうとする力がすごい!」と丹下が石見さんを賞賛し、本日の密談は終了!