2020年11月20日、「ビジネスを『賢人』から学ぼう」をキャッチコピーに、オンラインで開催された「SHIFTゼミナール」。 BASEの代表取締役CEO 鶴岡裕太さんと弊社社長 丹下の「密談」と題した対談が実現。さまざまな話が聞けた貴重な対談のポイントを前編につづき、後編も大公開! ぜひご覧ください。
GMVと売れている店舗の数が大事
丹下からの質問:ローンチして1年後、どれくらいの店舗数になったのか?
- 丹下の質問に「3万店舗ぐらいは、いっていました」と鶴岡さんは回答
- 3万店舗のなかには幽霊店舗も活動している店舗もあり、それらが混在していた
- 現状、BASEの店舗数は120万店舗にまで増加
- そのうち1ヶ月で売上が上がる店舗は4%ぐらい
- 当時、売上が上がっていた店舗は4%よりもまだまだ低かった
<<大型店舗を狙うのは本末転倒>>
- ローンチして1年後も、まだ売上が立っていなかった
- 決済手数料には、カード会社に支払う原価がある
- 当時はいまよりも手数料が低く、原価がそのまま出し値だった
- GMVと売れている店舗の数が大事
- 鶴岡さんには「小さな店舗をエンパワーメントしたい」という想いがずっとあった
- そのためGMVだけKPIにもつと、大型店舗をとろうという感じになり、本末転倒
- 目標のGMVを何店舗かで達成するようにしてきた
- 鶴岡さんは何年間も投資家に「そこだけ追わせてください」とコミット
- 売上はあとから頑張ると約束してきた
<<現状の店舗ごとの売上>>
- 現在、先述の通り、BASE を活用して1ヶ月で売上が立つ店舗は約5万店舗
- 各店舗の売上平均が15万円ほど
- BASEではその決済手数料から8~9%もらっている
- 「個人でやっていて売上が月15万円あればいいよね」と丹下
- 実店舗をもっていて、ECの売上がすべてではない店舗もある
- 店舗によってそれぞれとのこと
丹下からの質問:大型店舗より小さな店舗を大切にしたのは、開発当時からアイデアがあったのか?
- 大型店舗だと手数料を下げられてしまう
- むしろ小さな店舗を支援した方が手数料の割合は大きい
- このアイデアが生まれた経緯について、鶴岡さんに問う丹下
<<多くの価値を小さな店舗に>>
- 「当時から、(大型店舗より小さな店舗を大切にした方が)提供できる付加価値が多いと思っていた」と鶴岡さん
- いま思えば、付加価値=手数料
- しかし、ここまで言語化できていなかった
- そこまで見えていなかったのが事実かもしれない
- しかし、「プロダクトは大きくしていきたいとは思っていた」と鶴岡さん
- ロングテール向けの方がECも金融もマーケティングもできるという考えはあった
- 大型店舗だと、すでにいろいろもっているため提供できる価値は少ない
- しかも、大型店舗と組みたいところも多い
- 例えば金融だとメガバンクが競合になることも
- だからこそ、ロングテール向けの方がいろいろな価値が提供できていい
店舗がうまくいったときプラットフォームもうまくいく、フェアな関係でいたかった
丹下からの質問:8年間やってきて、思い出深いできごとは?
- ファイナンスは最初大変だったと鶴岡さんは改めて回
-
そしてファイナンスのネックになっていたものについて言及
<<ネックになったもの①:信念>>
- 鶴岡さんたちは、個人やスモールチームがSNSを通じてものを売り、彼らの時代になっていくと信じていた
- いまでこそネットショップがたくさんできることは、みんな理解してくれる
- しかし、そんなショップではものが売れないと当時は大半の人が思っていた
<<ネックになったもの②:ビジネスモデル>>
- 鶴岡さんはビジネスモデルにもこだわりがあった
- それまでのEC作成ツールは初期費用、月額費用をとるのが一般的
- 鶴岡さんは、店舗がうまくいったときに、プラットフォームもうまくいく、そんなフェアな関係でいたかった
- どちらかだけがうまくいっている状態は短期的なビジネスになる
- フェアな関係にするために、手数料だけにすることを決めていた
- 「そこも当時は懐疑的で、絶対月額をとって積み重ねていった方がいいと言われていた」と鶴岡さん
- しかし、目指していたのは成功報酬
- これら2つが引っかかって、ファイナンスに苦労していた
<<大変だった思い出>>
- 鶴岡さんが大変だった思い出としてもうひとつあげたのが、組織について
- 学生企業だったこともあり、鶴岡さんは世の中の会社を見たことがない
- 組織がどんなものか、誰がどんな想いをもっているかわからなかった
- ずっとプロダクトをつくっている経営者であったため、組織の歪みを経験
- 「そこはメンバーに迷惑をかけてしまった」と鶴岡さん
丹下からの質問:プロダクトをつくることに関しては、ブレることがなかったのか?
- いまのような時代にならなかったら、鶴岡さんは「やめてもいいか」と思っていた
- 当時はミッションを曲げてまでやる気持ちはなかった
- ミッションドリブンでやっているため、ブレたら存在意義がない
丹下からの質問:コロナ以前のできごとで、大きな影響があったものは?
- コロナで家にいることが多くなり、ECを開設する人が爆発的に増えた
- それ以前にも、影響を与えたものがあったはず
- そう推察し、鶴岡さんに質問を投げかける丹下
<<Instagramの影響>>
- 丹下の質問の回答として鶴岡さんがあげたのは「Instagram」
- 2018年からBASEは伸びる角度が変わった
- Instagramの台頭が大きい
- そこでSNSを通じてものを買うということが本格化
- 購入者とマーチャントサイドにとってもその買い方や売り方が浸透した
- 2018年は自分達でも違うトレンドになったと実感している
最初から頑張れたのは競合のおかげ
丹下からの質問:競合他社はいるのか?
- サーバーをたくさん集めるための資金調達も、エンジニアを囲うための資金調達もある
- 競合他社がいなければ、焦らずサービスをつくればいい
- もし競合他社がいるのなら、そのなかでどの機能を優先的に出すことを決めていったのか
- 「そこが気になる」と丹下が話し、まず競合に関する質問から鶴岡さんが回答
<<BASEの競合他社>>
- BASEができたときから、競合としてストアーズがあった
- お互い同じような価値を提供
- どちらかがリリースしたら、同じようなサービスをリリースするような感じだった
- 小さなマーケットかつ、メディアも煽ってライバル構造ができあがったが、おかげでたくさんのニュースが世の中に
- さらに「競合を意識しなくていいの?」「競合より早くリリースしないとこわいね」という話が出て、社内のモチベーションも高くなった
- 最初から頑張れたのは競合のおかげ
<<資金調達と投資家について>>
- BASEの場合、資金はほとんど人件費
- 最初は、資金調達を含め、採用においてもその点を意識した
- BASEは事業会社にたくさん投資してもらっている
- 大きな世の中に大きな価値を生み出している組織や経営者に「メンタリングしてもらえるとうれしい」というのが、鶴岡さんの個人的な株主への期待値
- これまで、リスペクトしている企業投資家たちに投資をお願いしてきた
- 鶴岡さんのマインドを維持するために投資してもらっていた観点もある
<<長く勝負をつづけるには>>
- BASEは地味な事業をつくっている
- 長くやらないと絶対勝てないというのは当初からあった
- 1、2年で勝負が決まるマーケットではない
- BASEは何かほかのサービスを使って、リフトをリプレイスしているわけでもない
- 世の中の「ネットショップをつくりたい」と思った人が、順番に使ってくれている
- 何十年もやらないと基本的には勝負に勝てないというのが大きい
- 長くやるために、どういう人に応援してもらえばいいだろうというのはあった
BASEではリリースのスピード感が大事
丹下からの質問:現在、組織の問題などはクリアしたのか?
- 鶴岡さん曰く「当時とは違う課題観にはなっている」
- 組織として苦労したのは従業員が50人、100人くらいのとき
- サービスは大きくなり、人も増えているけど、組織構造は変わっていなかった
- 「いろいろケアしなくてはいけない部分があったが、気にせずにサービスを成立させることだけに集中した」と鶴岡さん
- その結果、メンバーにしわ寄せがいってしまっていた
丹下からの質問:エンジニアを採用したり、評価する際に気をつけていることは?
- 鶴岡さんから出た言葉は「評価方法は確かにむずかしい」
- 給与グレードができたのは最近
- 鶴岡さんはエンジニアだったので、その尺度で管理することにも課題を感じていた
- エンジニアという職業は、アウトプットが多いほどいいわけではない職業
- サービスに何も問題が起きないことが最高で、「守っている」仕事がたくさんある
- そういう人たちをどう評価していくべきか悩み、評価制度をつくることに
- 定性面と定量面をいい感じに融合せていきたいとの想いをずっともって評価してきたが、言語化するときがきた
<<評価の指標>>
- BASEは「今月の数字」をつくるタイプのプロダクトではない
- たとえば残り1日でGMVが100万円足りないとき、それを強引に埋められるわけではない
- どちらかといえば、BASEはリリースした機能が半年後、1年後の数字にインパクトするというプロダクト
- いまリリースしても何も変わらないが、半年後を考えるといまリリースすべきということがある
- リリースするスピード感は社内で強く意識しており、それが評価の指標のひとつ
- リリースが1週間ずれてもすぐの数字にインパクトはない
- しかし1週間のずれが、半年、1年後の数字の差になる
- さらに、BASEは世の中のトレンドにあわせてリリースしていく
- だからこそ、BASEではリリースのスピード感は大事にしている
BASEをどこまで世界中の人のためにつくり込めるか
丹下からの質問:機能のリリースのタイミングも鶴岡さんが指揮をしているのか?
- 鶴岡さんが行っているのは、大きな方針の決定だけ
- 担当の役員が現場をまわしている
- そこの権限は鶴岡さんから徐々に切り離している段階
丹下からの質問:BASEを利用したユーザーの声は届いているのか?
- サービスをローンチした後の1~2年は、ユーザーが鶴岡さん達にプレゼントを贈ってくれた
- すいかや野菜、手紙も届いたことがある
- 当時は初期費用や月額費用がかからないEC作成サービスは皆無
- ユーザーが「本当にBASEはやっていけるのか」心配してくれた
- そういう想いが鶴岡さんのモチベーションに
- しかし、ローンチ後3~4年したら贈り物がなくなった
- 寂しいが、BASEを心配するユーザーがいなくなり、お金がかからずEC作成サービスを利用できることが当たり前となった証
- いまもなお鶴岡さんはユーザーと直接会うことが多い
- そのときに「BASEは大きくなりましたね」と言われる
- そういうサービスはほかにない
- BASEは利用者と近いサービス
- ユーザーがいるから頑張れている
<<ユーザーと向き合いつづける大切さ>>
- ユーザーと向き合ってサービスをつくりつづけるのはむずかしい
- ユーザーが喜んでくれるためにサービスをつくることは誰でも思える
- いまこの瞬間からできることだが、やりつづけることができるチームは世の中に少ない
- 長い目線でユーザーの可能性を絶対信じきる
- どんなに些細なことでもユーザーのためにプロダクトをつくる
- 「このことを忘れてはいけない」と力強く鶴岡さんは発言
- 簡単なことだけど、みんなができていないという世の中の大きなギャップがある
- 「そのギャップに張っている感覚」と鶴岡さんは説明
丹下からの質問:サービスの線引きはどこにしているのか?
- ユーザーのためにサービスをやろうと思えば、いくらでもサービス領域を広げられる
- 自分たちでやるべきサービスをどこかで線引きすることが必要
- そう丹下は見解を話して、鶴岡さんに「サービスの線引き」に関して質問
<<BASEでの線引き>>
- 「いまは完全にEコマースで基本的に線を引いています(金融や決済は別軸でやっている)」と鶴岡さんは回答
- 鶴岡さんの願いは、グローバルで使われるプロダクトをつくること
- BASEの場合、購入者は世界から買えるが、ショップオーナーは日本だけ
- 決済のレギュレーションなどがそういう状態を生んでいる理由
- グローバルで通用するプロダクトをつくろうとすると、ワンプロダクトに厚くリソースを投下しないとならない
- FacebookやInstagramは検索機能に何千人もエンジニアを突っ込んでいる
- こういう会社と対等に戦わないといけない
- ここまでくるのに10年かかっている
- 働けるのがあと40年しかない、かつネットプロダクトのため、あと20、30年しかないと思うと、なにげに時間がない
- 「BASEというプロダクトを、どこまで世界の人のためにつくり込めるか」という想いがある
ネットショップの制作は、モノづくりをしている人たちがする業務じゃない
丹下からの質問:オープンソースという概念と自社の想いでつくっていくのは、何が違うのか?
- BASEがローンチした当時、ECキューブというオープンソースがあった
- 「インターネットの世界だから、みんなで寄せ集まってつくった方がいいという考えもある」としつつ、上記の疑問を投げかける丹下
<<ネットショップをつくる業務も分業化>>
- 個人的にはと前置きし「餅屋は餅屋というのがある」と鶴岡さん
- 専門領域に特化しきるのが大事
- ネットショップをつくる業務は、モノづくりをしている人たちに本来やってもらう業務じゃない
- モノづくりをしている人たちには、モノづくりだけをしてもらった方が世の中のためになる
- そこにお金や工数を割いてもらうのは、個人的にきれいだと思わない
- だからBASEとしては、できるだけ業務を巻き取ってモノづくりだけしてもらえる状態にしたい
- 直近の業務支援系のプロダクトは、そちら側に流れている傾向がある
- 分業化、細分化していった方がいい
BASEのショップ数は桁が変わるまでいくこともありえる
丹下からの質問:オプトインのサービスを増やしていくことが、基本的に今後の戦略のひとつなのか?
- 「メインですね」と鶴岡さん
- コマース自体の機能とブランドを強くし、国内で地位を確立していく
- そのうえで、グローバルチャレンジができるかどうか
- 金融関連のサービスをつくっているのはBASEに対する付加価値の一部
<<BASEのこれから>>
- 「毎月、数万店舗伸びているんですよね」と丹下
- 最近、BASEのCMも放送中
- 「何万店舗いくの?」とさらに丹下が質問
- BASEをつくったときは10万店舗いけばいいと鶴岡さんは思っていた
- コロナの影響もあり、リアルに店舗をやっている人がオンライン化している
- そのため、すごい数で出店数が増加
- 「桁が変わるぐらいまでいくこともあるのでは」と鶴岡さんは推察
- ひとつの会社で複数のショップをもっていたり、期間限定ショップある
- そういう意味で、ショップ数はまだまだ伸びるはず
- 「フリマするお店を自分で開くこともあるのでは」と丹下も言及
- それを受け鶴岡さんは「SNSサイドも強くなり、集客経路も強くなる」
- そして「それとセットで頑張れるといいなと思っています」と鶴岡さん
- 「話が尽きない。面白過ぎました」と丹下が話しつつ、時間がきてしまったため、盛り上がった対談もここで終了!