ブライトコーブとSHIFTが解き明かす「動画市場」と「動画の品質」

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「飛躍的に成長を遂げる動画市場~動画プロジェクトの成否は“品質”で決まる~」と題し、2021年1月27日にSHIFTが2部構成のオンラインセミナーを開催。今回は、グローバルに動画配信プラットフォームを提供するブライトコーブ社より、川延浩彰さん(代表取締役社長兼本社シニアバイスプレジデント)と住友永史さん(プリンシパルソリューションコンサルタント)にご登壇いただき、SHIFTからは三上貴由(コアテクノロジー第2ビジネスユニット長)が参加しました。その模様を、レポートにまとめてお伝えします。

第1セッションのテーマは、「コロナ禍がもたらした動画ビジネスの変化と成長」

 

 

第1セッションを担当したのは川延さん。話はまず、ブライトコーブについて。ボストンに本社を構え、世界70ヶ国以上、3,700社以上のお客様を抱える同社。数々の輝かしい実績に加え、国内外で高い評価を受けています。なかでも、「2019年においては、アップタイムを99.9%実現。年間を通して、ほとんど落ちないサービスを提供できています」と川延さんが話す通り、圧倒的なサービスの安定性は特筆すべきポイントです。

つづいては、同社が集計・分析したデータをまとめた「VIDEO INDEX REPORT」をもとに、コロナが動画市場に与えたインパクトを読み解きました。「2020年4月から6月、コロナ禍でのオンライン動画視聴年間増加率(再生数、再生時間)を、エンターテイメント、ニュース、スポーツ、小売業のカテゴリーごとに前年同時期と比較すると、全体的な傾向として、とても高い伸び率が示されます」と川延さん。そして「特にそのなかでも圧倒的に伸びているのは小売業。リテールの領域で動画がとてもよく見られた1年だったことが、わかると思います」とつづけました。エンタープライズの動画においても、さらに動向を深堀り。視聴回数が93%増加していたデータなどを交えながら解説を行ってくれました。

また、デバイス別の動画視聴増加率を分析すると、すべてのデバイスが伸びているなかでも、特にコネクテッドTV(インターネットに接続されたテレビ端末)が顕著に成長している状況が明らかに。「コネクテッドTVでは長尺の動画が見られる傾向にあり、視聴完了率も他のデバイスと比べてとても高いです。長いコンテンツを、しっかり見てほしい場合は、コネクテッドTVに対していかにコンテンツを出すのかが大事になります」と川延さんはまとめました。

 

コロナ禍で起きた「急激な3つのシフトと市場への迅速な対応」

 

 

つづいては、川延さんが「急速な3つのシフトと市場への迅速な対応」と題してコロナ禍がもたらした大きな変化を、国内外の事例を交えながら説明。1つ目は、「オンラインシフト」。コロナを受けて急速に増加したオンラインイベントについて、川延さんがその一番のメリットとしたのは「参加のしやすさ」です。「キャパシティもほとんど制限されず、基本的には『来る者拒まず』。また、たとえば海外のイベントでも、移動や宿泊に伴う時間的な制限を解除できるのも、大きなメリット」と解説。オンラインイベントにおける、今後チャレンジすべき点としてあげた「臨場感の喪失」については「直近に関して言うと、オンラインに最適な配信フォーマットも出てきており、新たなフォーマットが確立されてきている」としつつも、技術面において、急激に増えるトラフィックへの対応が考慮点であると指摘もしました。

 

コロナが後押ししたコンテンツとビジネスのシフト

 

2つ目に川延さんがあげたのは「コンテンツシフト」。特に1回目の緊急事態宣言を機に起こった、新作映画の有料ストリーミング配信や独占配信は、コンテンツの流れを大きく変えました。スポーツのコンテンツシフトでは、アメリカ国内のスポーツコンテンツを配信していた企業が、コロナ禍で自国内でのスポーツシーンが失われた時、すでに再開していた韓国のプロ野球を配信した事例や、ドイツの大手有料放送事業者が、プロサッカーリーグの試合を無料で配信した事例などを紹介。「これまでには考えられなかった決断を、コロナが後押しした」と川延さんは強調しました。

「映画では、コンテンツの流入経路に変化が起き、いままで映画館で観ていたものが自宅で見られるケースも発生。それに伴い、自社サービスでコンテンツを独占的に配信することも差別化の要素となったのは、大きな話題」と語った川延さん。スポーツでは、これまでとは異なる領域のコンテンツを自社配信することでマーケットが拡大した事例があるものの、「『メディアとして、いま何ができるのか』と、自らの存在価値を見直したメディアも多かったのでは」と振り返りました。

最後は「ビジネスシフト」。ストリーミングサービスにおいては、外出自粛が求められる状況から大きな「巣ごもり需要」が発生し、世界中で急速に、さまざまサービスが立ち上がりました。さらに、D2Cの分野においては、スポーツメーカーが実施した実店舗からオンラインへの迅速な配置転換や、ジーンズメーカーがコロナ禍で達成した圧倒的な成長スピードを紹介。eコマースの急激な盛り上がりが語られました。

終わりに、川延さんはアフターコロナの世界観について「まだたどり着いていないので、あくまで展望ですが」と前置きしつつ、「オンラインとオフラインが融合して、ハイブリッドな世界観が確立される」という明るい展望を描いて、第1セッションは締めくくられました。

 

第2セッションのテーマは、「注目される動画活用ケースから考える失敗しないシステム導入」

 

 

第2セッションでは、ブライトコーブの住友永史さんとSHIFTの三上貴由がディスカッションを行いました。冒頭、住友さんが口にしたのは「『動画活用の成否を決めるポイント』は、非常にむずかしいお題でした」という言葉。しかし、動画活用の成否を決めるポイントとして「無料プラットフォームの有効活用」「良質なユーザー体験&高品質を目指すこと」「迅速な変化への対応」という3つの共通のポイントがあると切り出しました。

まず住友さんが説明したのは、「無料プラットフォームの有効活用」。YouTubeと有料動画プラットフォームを比較し、「圧倒的なユーザー数や拡散性、何よりも無料という点が、YouTubeの絶対的なメリット。一方で、高いカスタマイズ性や充実したサポート体制、コンテンツのセキュリティといった観点は、有料動画プラットフォームが得意としている部分になります」と解説。動画を配信する目的や、機能として重要視したい点によって、自ずと選択肢は決まってくると語りました。

得意領域が異なるそれぞれのプラットフォームに対して、「最初のユーザーとの接触や、注目を集めたい部分は、圧倒的なユーザーリーチや再生数をもつYouTubeを活用し、その後、興味をもったユーザーに対しては、カスタマイズされたユーザー体験や、データ計測といったテクノロジーを利用し、コンバージョンへ誘導。そして、ファン化に向けたアプローチとして、有料のプラットフォームを利用する」と使い分ける活用法が住友さんより提示されました。

 

動画のメリットを活かすために、欠かせない考慮点

 

 

つづいて住友さんが動画活用の成否を決めるポイントとして言及したのは、「良質なユーザー体験&高品質を目指す」ということ。動画は情報の伝達効率がよく、優れた表現手段である一方で、「再生しないと良し悪しがわからず、取捨選択がしにくい」「視聴に時間を要するため、満足度の期待値が高い」といった点を考慮しなければならないと指摘。考慮しなければ、利用者が定着せず、動画のメリットも活かせないとし、「良質なユーザー体験の提供と、高品質であることが必要である」と住友さんは語りました。

さらに、それを実現していくための方法として、「昨今のDX推進のアプローチと同様に、データを活用し、継続的にサービス改善のサイクルを回すこと」、「サービス品質の定期チェック、第三者評価ではSHIFTや、そのほか動画に精通した専門サービスを活用すること」、「ユーザー体験を高めるために効果的な動画プラットフォームの機能を活用していくこと」の3つが、住友さんより提案されました。

最後に語られたポイントは、「迅速な変化への対応」。第1セッションでも触れられたように、この1年間で、視聴動向は内部開発では対応がむずかしいほど大きく変化。動画プラットフォームの機能を活用した事例をあげながら、住友さんはその変化のスピードについていく術も示しました。

 

「オンデマンド配信」と「ライブ配信」で考慮すべきこと

 

 

第2セッションの後半は、動画システム導入において考慮すべきことをディスカッション。まずは住友さんから、オンデマンド配信において考慮するべきポイントの紹介がありました。「動画を配信する以外にマネタイズ、セキュリティなど、考慮すべき機能がある」と住友さん。そして「動画のプラットフォームと連携した機能を利用するのが一番確実」と提案しました。

「品質確保では、SHIFTさんなど専門家をうまく活用するといい」と住友さん。そして、オンデマンド配信はライブ配信に比べて「コンテンツを再生する」機会が多くなることを踏まえ、三上からは「トリックプレイやレジューム再生、メタ情報も重要になるので、それらを踏まえた考慮が必要。加えて、視聴環境の多様化に合わせて、多端末での検証は欠かせないと思います」と、品質・検証面からのコメントが寄せられました。

そして話題はライブ配信へ。ライブ配信で最重要視すべきこととして、住友さんは「配信中のトラブル発生時に、スムーズに対応できること」をあげます。そもそも大規模な負荷に対しても安定的に配信できるシステムかどうか、トラブルが発生しても、システム側で回避する耐障害性があるかどうか。これらの点を重要視すべきと住友さんは紹介。さらに品質面では、事前に画質・再生トラブルを起こさないように確認する大切さが語られました。

三上は、途中から見るユーザーも多いことにライブ配信では気をつけるべきと指摘。「DVR機能の重要性に加え、ライブの開始・終了のタイミングが明確ではない点への考慮や、マルチアングル、マルチキャストといった、複数ストリームの切り替えも品質面で確認すべきポイント」と言及しました。

 

正常な動作を確保するために、SHIFTが着目するポイント

 

 

「検証目線でさらにお伝えしたい」と、三上が動画サービスの品質チェックについて紹介。その大事なポイントとしてあげたのは、「どの部分が検証されているか把握すること」です。動画サービスには多くのシステムが関わっています。それに対し、「どの部分を検証するのか、またはどの部分とどの部分を連携する検証なのか。しっかり捉えることが重要」と強調しました。

さらに「検証ポイントを捉えたら、そのポイントに対して、どういう検証をしていくのか考える必要があります」と三上。そしてSHIFTがもつ閲覧性・検索性の高いナレッジの蓄積についても触れました。SHIFTでは、動画検証に対して、必要なテスト観点を蓄積。蓄積の工夫として、「システムの領域、機能、テスト観点をマトリックス上に表すことで、閲覧性や検索性を上げています」とポイントを解説しました。

三上はつづけて、「視聴環境ごとに仕様が複雑化する傾向にある現代では、『サービスの一番重要なポイントをプロジェクト内で共有し、デバイス別の挙動をどう許容するか』という判断が必要」と指摘。この部分にポリシーがないと検証に手間がかかり、コストがかさむこともあると注意を促しました。

 

SHIFTはレジューム再生や広告再生にも着目

 

 

三上は具体例をあげながら、さらに動画サービスのチェックすべきポイントを紹介。1つ目のチェックすべきポイントは、オンデマンド配信のレジューム再生で、復帰後に中断ポイントから再生できるか。2つ目は広告再生。「プレロールやミッドロール、差し込むタイミングがそれぞれ異なるため、条件を洗い出してチェックします」と説明しました。また、それら2つの組み合わせで発生する不具合にも言及。「広告を再生する直前にレジューム再生すると、復帰時に広告がスキップする」といった不具合にも注意が必要と語りました。

ライブ配信では再生数や同時視聴者数が重要なKPIです。その点を踏まえ、三上は再生機能以外にも、サービスごとに異なる「視聴者としてカウントする判定基準」や「判定のタイミング」の確認が、特に正常な動作の確保につながることを示しました。

第2セッションの最後には、住友さんから「いろいろな観点を組み合わせた、数多くのテストケースを効率よく実行する点において、SHIFTさんのテスターの方にはかないません。自社で行うよりも、恐らく3倍、4倍の速度で検証されていくので、品質確認にはSHIFTさんみたいな専門家をぜひ活用したい、と常々思っています」とお褒めの言葉もいただきました。

 

コンテンツを量産するなかで、激しい競争を勝ち抜く秘訣は?

 

 

最後に設けられた質問タイムでは、三上が「コンテンツを量産するなかで、激しい競争に勝つための秘訣はありますか?」という質問をピックアップ。まず、川延さんが「コンテンツは、明確な戦略がなければ自分たちの世界観と異なるものになり、うまく立ちいかなくなることもある」と切り出しました。そして「自分たちのコンテンツを配信するデバイスやオーディエンスを、最初にちゃんと考えてほしいです」と川延さん。さらに「スマホを見ている方が中心の若年層に対しては、スマホで比較的短尺なコンテンツをライトに楽しめるサービスをつくる必要があります」とつづけ、点と点をつなぎ合わせた明確な戦略を描いてからサービスを世に送り出す重要性を語りました。

住友さんがシステム開発面から重要な点として回答したのは「最初の計画時に、明確な線引きをしてしまわない」こと。「要求・仕様通りに動くだけではなく、その先にあるユーザーの関心や変化をイメージすることと、それに対応していくため、動画プラットフォームなどの機能を活用していくことが大切である」と提言。最後に、三上が「まず目標を明確にもち、手段としてはマッシュアップであっても、一番はやく、近道でアプローチすることがポイントと感じました」とまとめ、セミナーは幕を閉じました。

ブライトコーブ社を担うお二人のお話、そしてSHIFTメンバーとのディスカッションは、いかがだったでしょうか。次回もSHIFTが主催するセミナーに、ぜひご期待ください!

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